400年の時を超え
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形は違えどこの世の真理を追い求めているのだと聞いた。
彼女もクリケット達と同じく、己の人生をかけるに値する譲れない信念があるのだろうか。
アキトは今だ謎多き女性であるロビンのことを頭の隅で考えずにはいられない。
そして、自分は今、己の信念を貫いて生きているのだろうか、アキトは不意にそんな漠然とした疑問を抱いた。
ナミ然り、ビビ然り、クリケットさん然り、この世界の人々は自身の確固たる信念の下に生きている。
ナミは愛する故郷の奪還のため、ビビは愛する祖国のため、クリケットさんは先祖との決着のために人生を駆け抜けてきた。
ナミは世界地図を描くべく旅立ち、ビビは祖国を己の意志の下旅立ち、クリケットさんは今や空島へと辿り着いた。
そんな彼女達の姿は自分にとってとても輝かしく、偉大であり、眩しいものだ。
それに対して自分は確固たる信念を己の胸に有しているのだろうか。
勿論、自分にも譲れない信念はある。
彼女達を支える柱になること、それが自身の嘘偽りない本心だ。
弱気を助け強気を挫く、ナミ達を支え、彼女達の信念を貫き通すための柱となる、それが己の信念であることはナミと出会った当初から変わらない。
それならば、人生を駆け抜け、追い求めるものが自分にはあるのだろうか。
自身が本心から欲するモノとは何なのか、アキトは自問自答を繰り返す。
"生きてこの世界を見て回るために"、本当にそれが自身の本心なのか?
本当に自分が欲しているモノとは一体……
「……アキト?」
そんな答えの見つからない思考もナミの此方を気遣う呼びかけにより中断される。
「ちょっと大丈夫?さっきから心ここにあらずって感じよ、アキト」
「……大丈夫だ、問題ない」
アキトの生返事にナミは眉をひそめ、身を寄せてきた。
真剣な表情でアキトの額に己の手を当て、顔を近付ける。
「熱は、ないわね。もしかしてこれまでの連戦の疲労だったりする?」
ナミの問いにアキトを首を横に振り、否定の意を表す。
ドラム王国から続く連戦による疲労はほぼ完治しており、恐らく残り数刻程で完全回復するだろう。
ナミは悩まし気な様子で唸り、アキトの瞳を覗き込む。
彼女が真剣に此方の体調を気遣ってくれている状況下で、物思いにふけていたとは言えず、アキトは暫くナミの瞳を見続けた。
純粋な善意である故に、余計に弁明の言葉が続かない。
『……』
アキトの紅き瞳とナミの琥珀色の瞳が交錯する。
暫くアキトとナミの2人は時間を忘れ、お互いに見詰め合っていた。
ドラム王国のDr.くれはの医務室ではアキトがナミの体調を確認するべく、顔を近付けたことを覚えている。
しかし、ナミの顔をこれだけの近距離で
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