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ある晴れた日に
544部分:柳の歌その十一
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柳の歌その十一

「今パパの百貨店で九州の名産展やってるからなのよ」
「ああ、それでか」
「それで長崎のカステラ」
「それだな」
「そうよ。他に長崎は」
 ここぞとばかりに自分の父親と兄が勤めているその百貨店の宣伝もする咲だった。
「長崎チャンポンもあるし」
「長崎チャンポン」
「いいわね」
 話を聞いた静華と凛が早速言う。
「あの太い麺とお野菜」
「スープは豚骨で」
「それに博多ラーメンに明太子にがめ煮もあるわよ」
「今日行く?」
「っていうか絶対に行きたいわね」
 奈々瀬と茜は今の咲の宣伝に早速心を奪われていた。
「鹿児島だと黒豚に薩摩芋のアイス」
「白熊もあるわよね」
「パパの実家の熊本もあるわよ」
 そちらも健在だった。
「あの知事さんの宣伝してる名産が一杯あるから」
「まあそっちも今日行くとして」
 話をそれで収めてしまった明日夢であった。
「あいつへの差し入れはどうするのよ」
「ああ、そうだったな」
 野本もその頭の中に九州の名産のことばかりになってしまっていた。それで話を振られてやっと思い出したのである。そんな有様だった。
「だよな。どっちにする?」
「羊羹は日持ちするよ」
 今言ったのは竹山だった。
「羊羹はね」
「それに対してカステラは」
「だとすると」
 皆カステラに注目する。しかしここでこうも思ってしまうのは止められなかった。
「美味そうだな」
「そうよね」
「いい香り」
 カステラの香りまで漂いそれに魅了されてしまっていた。
「だとしたらこれで」
「決まりね」
「流石長崎名物」
「よし、だったら」
 今言ったのは桐生だった。
「そのカステラ何個か買って行こうよ」
「何個かって」
「何箱でしょ」
「あっ、御免」
 とりあえず言葉は訂正した。
「そうだったね」
「そうだよ、間違えるなよ」
「この場合は箱だから」
「そうだったね。それで何箱かね」
 訂正したうえでまた言う桐生であった。
「彼の差し入れにね。持って行こう」
「それで何を持ってくのよ」
 九州に縁のある咲が問うた。
「それでだけれど」
「そうだね。この普通のと」
 まずはそれだというのだ。
「後はね。抹茶と?これあるかな」
「確かあったわよ」
 こう答える咲だった。答える時少し上目遣いになって教室の天井を見ている。
「あとコーヒーとか紅茶とか蜂蜜とか」
「それじゃあ蜂蜜かな」
 桐生が次に選んだのはそれだった。
「その三つでどうかな」
「何で抹茶と蜂蜜なの?」
 千佳がその三つにしようという彼に尋ねた。
「それが気になるけれど」
「ああ、それはね」
 その問いにも答える桐生だった。
「まずは普通のは外せないじゃない」
「ええ」

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