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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-
第001話 『プロローグ』
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ないことはないかな?」
看護婦さんが必死な目をして問いかけてくるので私は必死になって思い出そうとしたんだけれど、まったくなにも思い出せない。
いや、まったくというわけではない。一つだけ、助けてくれた兄の『■■』という名だけは覚えていた。
そのことを伝えると看護婦さんは沈黙してしまった。
なんでそんな悲しそうな顔をするんだろう?
そうこうしているうちに後からやってきた先生に看護婦さんは私の言ったことを伝えた後、涙を流しながら病室を出て行った。
それから先生に色々教えてもらった。
私はどうやら記憶喪失なのだという。
そしてあの大火災での数少ない生き残りだとも。
それを教えてもらったときの私は薄情なのかもしれないけど、特に絶望とか喪失感といった、そんな感情はいっさい浮かんでこなかった。
ただ、「そうなんですか…」と相槌を打つだけだった。
それから数日、私は個室のベッドの上でただ外を眺めていることしかしていなかった。
だって、何もする気が起きなかったから。
名前もわからなかったためか病院内を時たまに検査で出歩いても『お嬢ちゃん』としか呼ばれることはなかった。
ただ、腰まである赤髪が目立ったのか“赤毛のお嬢ちゃん”と次第に呼ばれるようになっていた。
ふとした日に扉がノックされいつもの先生なのだと思って「はーい」と招き入れるとその人は先生ではなかった。
ぼさぼさとした髪に乱れたしわくちゃな背広を着た男の人だった。
「やあ。君が……えっと」
「あ、大丈夫です。名前がないのは特に気にしていませんから。それよりおじさんは誰ですか?」
「お、おじさん…」
あ、なにか傷ついているみたい。おじさんは悪かったかな?
だけど男の人はすぐに立ち直ってこちらに顔を向けてきた。
思えばあの時に聞こえた声の人だった。
「率直に聞くけど、このまま孤児院に預けられるのと、初めて会った僕―――おじさんに引き取られるのと、君はどっちがいいかな?」
おじさんは自分を引き取ってもいい、と言う。
親戚なのかも思い出せないから一応聞いてみたが、紛れもなく赤の他人と返された。
第一印象からして少し頼りなさそうな感はしたけど、孤児院とおじさん、どちらも知らないことに変わりはない。
だから、それならと思っておじさんについていくと私は返事を返した。
「そうか、なら善は急げ。早く身支度を済ませちゃおう。新しい家に一日でも早く慣れなきゃいけないからね」
それから、おじさんは慌しく私の少ない荷物をまとめだした。
しかし、その手際は子供だった私から見ても決していいものではなかった。
私も手伝うと言ったが「大丈夫」の一言で片付けられて結局最後まで一人で荷物をまとめてしまった。
そして荷物を持って部屋から出る前にお
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