第百十二話 若狭も手に入れその十
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「この女の存在が大きかった」
「そうだったぜよ」
「将軍の子を産んだが」
「その前に跡継ぎが決まっていたからのう」
「その争いが起こった」
次期将軍を巡るそれがだ。
「そこに興福寺や守護大名同士の争いも入ってな」
「余計にややこしくなってじゃな」
「乱が起こった」
「それを見るとのう」
「あの女が全てではないが」
「責任はあるのう」
「そうしたことを見るとな」
日野富子という女はというのだ。
「己しかない」
「天下を見てない人じゃったな」
「個人の富貴なぞこの世界の俺達ではどうとでもなる」
それこそというのだ。
「冒険者として生きればな」
「魔物、特に巨人を倒してぜよ」
「一財為せる、だがな」
「わし等の目的は違うぜよ」
「この世界だ」
「世界を救うことぜよ」
「そんな小さなものを見ていない」
富貴、その様なものはというのだ。
「あの女と違いな」
「そうじゃな」
「だからだ」
それでというのだ。
「俺はだ」
「関所もじゃな」
「領内では廃してな」
「国境に置いても」
「銭は取らない」
「そうじゃな」
「絶対にな」
そこはというのだ。
「守る」
「その方が利になるからのう」
「それはな、そして話を戦に戻すが」
「この小谷城からじゃな」
「今度は金ヶ崎だ」
越前のこの地だというのだ。
「そこに入る」
「これからそうするのう」
「美濃との境に兵を置き」
そしてというのだ。
「そちらに備えもしつつな」
「それからじゃな」
「金ヶ崎だ」
またこの地の話をした。
「そしてだ」
「そのうえでじゃな」
「あの地を抑えてな」
「若狭を手に入れてじゃな」
「そして越前全土だ」
若狭の次にというのだ。
「そうしていく」
「わかったぜよ、ほなぜよ」
「その様にな」
「攻めていくぜよ」
当季も笑って応えた、こうしてだった。
英雄は次は美濃との境に備えて兵をそちらにも置いてから主力を率いて金ヶ崎城に向かった。そしてだった。
その城を囲むとだ、すぐにだった。
「降ってきたか」
「はい、我等が囲むとです」
智が答えた。
「それで」
「戦を諦めたか」
「その様です」
「ならだ」
そう聞いてだ、英雄はこう言った。
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