五十一匹目
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まれていた。
ここはスラムが近く、他の場所と比べて治安が悪い。
「あ、あの、えっと、私達は…」
売り子が紙袋に刻印された家紋を見せるが、男は見もせずに破り捨てた。
「貴族だろーが何だろーが、知った事じゃぁねぇんだよ!」
男が売り子を殴った。
ガシャンと屋台につっこむ。
並べられていたポップコーンやジュースが散乱する。
「ショバ代も払わねぇよーな奴等が商売なんざしてんじゃねぇよ」
男が剣を抜き、屋台を壊そうと剣を振るった。
が、しかし。
キィン! と剣が支柱に弾かれた。
「んだコレ!? 堅!?」
男の配下も屋台の支柱を切ろうとしたが、そちらは剣が半ばから折れた。
「当たり前だろう。分子結合魔方陣を仕込んだカーボンナノチューブを幾億にも重ねた炭素棒だ。お前達の粗末な剣では欠けもすまい」
声変わり前の、男か女かわからないような声。
男達が振り向くと、そこには狐の獣人の子供がケンタウルスにまたがっていた。
「で、その屋台僕の物なんだけど、何か用かな?」
「そうかいそうかい…貴族様の道楽って訳だ………」
「んー。なんかもう、テンプレ乙っていうかやられ役っていうか…。
うーん……。まぁいいや。とりあえず王国の騎士には年齢に関わらず平時でも逮捕件があるから傷害罪と営業妨害と器物損壊の罪で現行犯ね」
トン、とシラヌイがリィンの背から降りる。
「おい聞いたか! 騎士だとよ!」
シラヌイを見て嗤う男達。
「嘘つきなガキにはお仕置きしないとなぁ!」
「まぁ騎士っていうのが嘘だとしても貴族特権で罰する事ができるけど……」
男はさすがにまずいと思ったのか、納刀して殴りかかった。
「レイヤードウォール」
男の拳の全面に幾層もの水の壁が現れる。
一枚一枚では拳など防げようもない壁だ。
「凍れ」
ピシィ! と水が氷に変わる。
男の手に層状にまとわりつく氷の枷。
体積が増えたそれが男の手に食い込み、皮膚を突き破った。
じわりと血が滲んだのと同時に、男は氷の重さで倒れた。
「メルト」
塞がれていた傷口が解放され、鮮血が溢れる。
「お坊っちゃま? 後は私が」
「いや、僕がやる」
シラヌイが倒れた男を氷で地面に縫い付ける。
そして人差し指を上に向ける。
「クリエイト・アクア」
シラヌイの真上に現れる巨大な水球。
「全員逮捕だ」
水球から伸びる水の触手。
スライムの緩慢なそれとは違い、一瞬の事だった。
巻き付き、絡み付く。
ギチギチと締め付ける水が凍り、いっそうきつく締め上げる。
「あとは巡回の兵にでも任せればいいか
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