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戦国異伝供書
第四十八話 去った後でその二

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「では」
「それでは」
「それでは今から」
「退きです」
 それに入るというのだ。
「宜しいですね」
「わかり申した」
「ではです」
 景虎は皆にも告げた。
「今より越後に戻ります」
「わかり申した」
「さすれば」
「今より陣を払いましょう」
「そうしましょうぞ」
「この度は残念ですが」
「そして後詰は」
 ここで兼続を見て彼に告げた。
「お願いします」
「わかり申した」
 兼続も頷いてだ、そうしてだった。
 彼が後詰となりそのうえで長尾家の軍勢は素早く陣払いを行い越後に戻りにかかった。その彼等を見てだった。
 飯富は騎馬隊の中で山縣に歯噛みして言った。
「攻めたいがな」
「はい、あの布陣では」
 兼続が率いる後詰を見てだ、山縣も兄に応えた。
「攻めたくとも」
「無理じゃ」
「迂闊に攻めれば」
 その後詰をというのだ。
「かえってです」
「我等がな」
「大怪我をします」
「そうじゃ、見事な守りじゃ」
 その後詰はというのだ。
「だからな」
「この度は、ですな」
「攻められぬ、お館様にも申し上げるか」
「それでは」
 二人で話をしてだった、共に晴信のところに行ってそうして彼にこのことを話そうとするとだった。
 その晴信もだ、二人だけでなく本陣に揃っている諸将に述べた。
「わしもあの後詰は見たが」
「ではお館様も」
「あの後詰は」
「攻めてはならぬ」
 決してという言葉だった。
「下手に攻めてはな」
「こちらがですな」
「返り討ちに遭う」 
 こう山縣に答えた。
「だからな」
「この度は、ですな」
「攻めずな」
 そしてというのだ。
「そのまま行かせよ」
「それでは」
「我等は信濃を領地にすればいい」 
 それが武田家の目的であることをだ、晴信は言うのだった。
「だからな」
「この度は、ですな」
「そうじゃ、敵が去るならな」
 それならというのだ。
「それでよい」
「だからですか」
「その敵が去った」
「それならよし」
「そうじゃ、では敵が去ったなら」
 晴信は既にそれからのことを考えていた、先もっと言えば先の先まで見てそのうえで言うのである。
「海津の城をな」
「これまで以上にですな」
「確かに造りにしてじゃ」
 山本にも答えた。
「そしてじゃ」
「また越後の軍勢が攻めてきても」
「無事に守れる様にしてな」
「越後の見張りと睨みを利かすことをな」
 その両方をというのだ。
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