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戦国異伝供書
第四十八話 去った後でその一

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               第四十八話  去った後で
 川中島での対峙は続いた、だが何時までも対峙出来る筈もなくだった。直江は景虎に対して言った。
「もうです」
「ここにいることはですね」
「はい」
 どうしてもと言うのだった。
「潮時かと」
「そうですね、今はです」
「これで、ですね」
「下がりましょう」
 景虎は今この断を下した。
「そうしましょう」
「ではすぐに」
「陣を払い」
 そしてというのだ。
「そのうえで、です」
「越後にですね」
「戻りましょう」
「それでは」
「それでなのですが」
 景虎はさらに言った。
「後詰ですが」
「殿、そのことですが」 
 すぐにだ、直江は景虎に怪訝な顔で言った。
「殿のご気性からして」
「後詰にですか」
「言われると思いますが」
「総大将がまず危険を冒さなくてはです」
 実際にこう言う景虎だった。
「ならぬとです」
「思われていますね」
「戦ならば」
 だから常に攻める時は自ら刀を抜いて敵に向かっているのだ、景虎の心に怖気というものは存在しないのだ。
「そう思いますが」
「左様ですが」
「それでもですね」
「総大将ならば」
 それならというのだ。
「やはりです」
「後詰をしてはならない」
「ですから」
「この度も」
「どうか他の者にご命じ下さい」 
 こう言うのだった。
「お願いします」
「それでは」
「そしてですが」
 直江はさらに言った。
「やはりです」
「その後詰の将はですね」
「誰かですが」
「それはもう決めています」
 景虎は微笑んで答えた。
「既に」
「誰でしょうか」
「貴方の子です」
 即ち兼続だというのだ。
「あの者にです」
「命じられますか」
「宜しいですね」
「我が子はまだ若いですが」
「はい、ですが」
 それでもと言うのだった。
「その器であるとです」
「思われるからですか」
「そうです」
 それ故にというのだ。
「この度はです」
「あの者にですか」
「任せます」
 後詰、それをというのだ。
「是非」
「そうですか、それでは」
「それでいいですね」
「殿がそう言われるなら」
 直江もだった。
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