第三話 交流会(後)
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いいですよ?」
「……悪い」
「でも、私のことを考えてくれていても、こうして隣にいるんですから、ちゃんと今の私を見てくれないと怒っちゃいますよ?」
「それは嫌だな。冴空には笑っていてほしい」
「えへへ……あ、着いちゃいましたね」
冴空の声に反応して氷絃も彼女の視線の先を見ると、確かに女子寮がすぐそこにある距離まで二人は歩いていた。冴空が握っていた手を離し、くるりと氷絃の方を向く。
「氷絃くん、私の我儘を聞いてくれてありがとうございました」
「このくらいなら大丈夫だ。冴空がそれで満足してくれるならな」
「はい! ではまた明日──」
「ちょっと、待ってくれ」
すぐ近くの女子寮に帰ろうとする冴空を、氷絃は咄嗟に引き留めた。
「氷絃くん?」
「あ、っと悪い。これだけは、聞きたくてな……」
「効きたいこと、ですか?」
「冴空は、魔女になりたいのか? 今、魔女候補だからとかそういうのは関係無く、純粋になりたいかなりたくないかで答えてほしい」
氷絃は自分の考えを見直すと同時に、冴空の考えも知りたかった。そのため、こうして冴空の意思を尋ねた。
「私は、魔女になりたいです」
その答えは分かりきっていた。氷絃は知っている、冴空が魔女になりたいことを。そしてそれは今までの氷絃が目を逸らしてきた紛れもない事実だ。
「でも、ただの魔女ではありませんよ。私は氷絃くんの魔女になりたいです。氷絃くん以外とは契約したくありません」
冴空は真剣な眼差しで、真っ直ぐ氷絃の顔を見てそう断言した。それも氷絃は理解している。
「……どうしてそこまで俺と契約したいんだ?」
そして、彼は一つの疑問を彼女にぶつけた。
「──ですから」
「……え?」
本当に小さな小さな返答を氷絃は聞き逃した。咄嗟に聞き返すと冴空は顔を真っ赤にしてワタワタしだした。
「あ! えっとなんでもありません! でも私は氷絃くん以外考えられません!」
「……そうか、ありがとな」
「そ、それじゃあ、また!」
「お、おう」
駆け足で去っていく冴空を見送り、寮に入ったところで氷絃は男子寮を目指して歩き始める。
交流会が終わり、一日空ければ入学式。新たな日常が始まる。
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