第三話 交流会(後)
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りがない、プロになりたい、しかし切羽詰まって組む相手を妥協するような都合のいい魔女がいいんですよ」
『理想』のために魔女のことを道具同然として扱う。氷絃は学園長を前にしてそう断言した。
「成る程な。見当はつくが、君の『理想』について教えてもらってもいいか?」
「簡単なことですよ。『冴空が魔女にならず、アイツの幸せを守り抜く』それだけです。もう二度とアイツをあんな事に捲き込まない為に、俺は──」
「ほう。つまり、今の君がしていることは全て珠充 冴空の為だというのか?」
「はい。今まで俺は冴空のためだけに生きてきました。勿論、これからもそのつもりです」
氷絃が覚悟の籠った視線で黄劉の方を見据える。その言葉を聞いた彼は──
「愚かだな、阿國氷絃」
見下すような、冷たい視線でそう吐き捨てた。
「……どういうことですか」
「どういう事も何も、君の『理想』が愚かだと言っただけだ」
「……頭ごなしに否定しないのでは?」
「『筋が通っていれば』を忘れるな。
君は『理想』は珠充 冴空の為と断言したが……私には自分自身の為、自己満足としか思えなかったがな」
「そんなことは!」
「ならば君の掲げているその『理想』を彼女に話し、理解してもらったか?
ただ己のみが負い目を感じている過去の贖罪をする為に、願われてもいない事を、彼女のためだと押し込めることで今までの自分をただ正当化しようとしているのではないのか? 彼女から、逃げ続けていたのではないか?」
「────────」
全てが図星だった。彼の『理想』はいつしか歪み、綻びだらけになり、その対象である最も大切な人にさえ話さなかった為、こうして指摘されるまで氷絃は自身の歪んだ理想を自覚できなかった。
「貴方に、何が、分かるんだよ……」
「反論の常套句だが、敢えて言わせてもらおう──分かる。と」
その言葉に、下を見てただ言葉を吐き出していた氷絃は黄劉の方を訝しんで見る。
「昔の私は君のように愚かで歪んだ理想を持ち、そうして後悔した。だから、分かる。大切な者を永遠に守っていきたいという理想も、大切な者を兵器にしたくないという願望も。
──経験者としてこれだけは言わせてもらおう。大切な者とは共に歩め。後ろに置いて守ろうとするな、その『理想』はいつか君の全てを絶望に変える」
その言葉にはとてつもない重みがあった。実際に経験して、後悔した、彼の自身への怒りを氷絃はただ感じ取り──助言を受け入れた。
「……ありがとうございます。すぐには無理だと思いますけど、少し考えを見直そうと思います」
「何よりだ。私のような者を教え子に出したくは無いからな。珠充冴空から逃げずに対話する事を勧める」
黄劉は「長話をし
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