きれいに巻いているつむじを見ると親指でグリグリやりたくなる話
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な日だ。
部活の関係で勉強する時間が夜しかなく、極度の睡眠不足。なので眠い。眠すぎる。
だが、今日は決戦の日。眠気に負けているようではダメだ。やはりここは彼の名前を聞いて、気持ちよく戦いに赴きたい。隼人はそう考えていた。
(お――)
電車に乗ったときは雨が降っており、空も黒く、電車の中も暗くて陰鬱な雰囲気だった。しかし寝落ちしている間にやんだのか、少し車内が明るくなっていた気がした。
(いい感じだな)
後ろの窓からも、ちょうどよい加減の光が入ってきているのだろう。目の前に立つ彼の整った顔は、一段と際立っていた。
そして混んでいるおかげで、彼との距離は限りなく近い。柔軟剤のいい匂いがするくらい近い。
ひるむ気持ちはあった。やはり恥ずかしいからだ。
でも、こんなに彼の名前を聞くにふさわしいタイミングはあるだろうか?
聞くのは恥ずかしいが、こんな絶好のチャンスを機会を逃す手はない。いつ聞くか? 今でしょ!
気持ちは固まり、隼人は突撃することにした。
(えーっと。名前を聞きたいなら、まずは自分から名乗るんだっけ?)
しっかりと見上げ、彼の顔を見る。
「俺の名前は隼人。ハヤブサにヒトって書いて隼人」
「えぁあっ!?」
「へえっ!?」
普通に名乗っただけなのに、なぜか凄まじかった彼の驚きぶり。
隼人の口からも、変な声が出てしまった。
(なんだ? 何が起きたんだ?)
眼鏡の奥に見える彼の目は見開き、口も半開きのままで固まっている。
(俺の名前、そんなに変だったか? 別に普通だよな?)
周囲のサラリーマンが一斉に奇声二人組を見ていたが、隼人には恥ずかしいと思う余裕すらなかった。
焦りと混乱のまま、時が流れる。
だが彼のほうは、なぜかすぐに落ち着きを取り戻したようだった。
彼が顔に浮かべたのは微笑……いや、ニヤリとしている感じだろうか?
隼人はその意味がわからず、二段ブーストで混乱した。
そしてそのまま、いつも隼人が降りる駅に到着してしまった。
「ま、まま、まままたな」
「ああ、また」
わけがわからない隼人が噛みまくりの挨拶をして立ち上がろうとすると、彼からはいつもどおりのあいさつが返ってきた。しかもまぶしい笑顔付きである。
混乱したまま出口に向かおうとしたが、そこで重大なことに気づいた。
(あっ。あいつの名前、まだ聞いてない――)
無情にも、サラリーマンの波は隼人の鍛え抜かれた体を飲み込んでいく。
列車の外へ、そして改札口の外へと押し流されてしまった。
頭が真っ白のまま、通学路を歩き続けた。
校門の前に着くと一度立ちどまり、空を見上げる。
雨は降っていないものの、
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