きれいに巻いているつむじを見ると親指でグリグリやりたくなる話
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込む。
目がつぶられていた。耳に感覚を集中すると、寝息まで立っていた。
(ね、寝ていたのか……)
どうやら、彼は完全に眠りに落ちていたようである。
そこで、電車が揺れた。
彼の頭部が揺れに合わせ、後ろへ。
無防備な寝顔が見えドキッとしたが。そのまま彼の頭は後方へ行き、後頭部が軽く後ろの窓に当たった。
彼の目が開く。
(あ、起きたな)
目が合うと彼は恥ずかしそうな笑みを浮かべ、すぐに伏し目となった。
(彼が寝ているのは初めて見たぞ……)
疲れているのであれば、今日はこれ以上余計なことはせず、そっとしておいてあげたほうがよいのだろうか?
総一郎がそう思ったとき――。
「俺の名前は隼人。ハヤブサにヒトって書いて隼人」
「えぁあっ!?」
あまりの唐突さに、総一郎の奇声が響く。
そして彼も、「へえっ!?」という変な声とともに、総一郎を見上げた。
周囲の乗客が一斉に奇声二人組を見たが、総一郎には恥ずかしいと思う余裕すらなかった。
(なんだ? 何が起きた?)
彼は確かに寝ていた。あれが演技なら日本アカデミー賞は受賞確実。海外進出も夢ではない。それに、寝たふりなのであれば、いま彼まで驚いている理由が説明できない。そもそも彼には演技する必要性がないはずだ。
いったいどうなっているのか。総一郎は混乱した……
……が、すぐに一つの推論を立てた。
(ああ、なるほど。彼は夢を見ていたのではないか?)
彼は確かに眠りに落ちていたが、彼自身はそれに気づいていなかったのではないか。
そして、彼は夢を見ていた。その夢の中には自分が出演しており、こちらの名乗りの声が届いていたのだろう。現実の声や音がリアルタイムで夢に出てくるということはよくあるらしい。きっとそうに違いない。
総一郎はそう考えた。
(僕の声は彼の夢の世界にまで届く――。大いに結構ではないか)
ニヤつきそうにもなったが、そこは一生懸命に抑える。
(しかし……隼人か。いい名前だな)
先ほどの彼の名乗りを、脳内でもう一度振り返った。
少しだけ恥ずかしそうな彼の声とともに再生された、その名前。
総一郎は、彼が下車するまでリピートして楽しんだ。
* * *
(やべ、寝ちまってた……)
いつものように電車の座席に座っていた隼人は、いつのまにか意識が飛んでいたことに気づいた。
目を開けたら、前に立っていた総一郎とまともに見つめ合った状態だった。
恥ずかしくなり、目を伏せてしまう。
(今日はこいつの名前を聞く日って決めてたんだ。寝てる場合じゃねえのにな)
先日の追試は全滅し、今日は追試の追試を受ける。とても重要
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