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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
ムスタール森林
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らめて(スープ)の出汁にでもするか。……つうか本当にナマズか、これ?」

 どう料理しようか思案する法眼の索敵領域にひときわ大きな生体反応が生じる。



 法眼が離れた隊とは別のハンター達も魔物の足跡を発見し、追跡をしていた。
 前方へと続く足跡に意識が向かう。その間隙を狙い横合いから魔物は襲撃した。
 俗に虎は先頭を行く者を襲い、熊は逆に最後尾の者を襲うと言われるが、この妖虎は隊列の真ん中に突っ込み、その凶爪を振るった。
 胴を両断され、顔を左右に裂かれ、ふたりのハンターが一瞬で命を奪われる。

「――ッ!」

 声にならない迎撃の雄叫びは、やがて恐怖の叫びに変わり、すぐに死の沈黙となる。
 虎――。見る者を恐怖に畏縮させる鋭い眼光、聞く者を慄かせる恐ろしい咆哮。強靭かつ柔軟な筋肉に 鋭い牙と爪。その顎の力は強く、獲物の首を狙って喰らいつけば牛馬をも窒息死させるほどだ。人なぞ頸骨もろとも喰い裂かれよう。
 ただの虎でさえそれほど脅威なのに、魔物化したそれはまさに災害級の名に恥じない存在である。

「これは……、聞きしに優る狂猛さよ」

 ぞぶりぞぶりぞぶり、くちゃりくちゃりくちゃり、こつりこつりこつり、ぞぶりぞぶりくちゃりくちゃりこつりこつり――。
 ぞぶり、くちゃり、ぞぶり、ぞぶり、くちゃり、こつり、ぞぶり、こつり、くちゃり、こつり、くちゃり、ぞぶりぞぶり――。
 腹に頭を入れて臓物を咀嚼し、骨についた肉を舌でこそぎ落として喰らう魔物。緑の森はそこだけ真っ赤な色彩を帯び、むせ返るような血臭に満ちていた。
 人を喰らう妖怪と、その被害現場には慣れている法眼ではあるが、あまりの惨状に辟易する。
 このような人食いの魔物、生け捕りになどせず今すぐに処断したいところだ。
 そんな法眼の殺気を感じたのか、人食いの妖虎が顔を向ける。

 GURURURURU……。

 上半身を返り血で赤く染めた魔獣の口から臓腑に響く重く冷たいうなり声が漏れる。
 常人ならば恐怖に失神してしまうことだろう。
 百戦錬磨のハンターを一瞬で仕留めた妖虎だが、法眼を手ごわい相手と認識したようで警戒し、すぐには襲ってはこない。
 そればかりか少しずつ後退しだした。
 その体がうっすらとぼやけ始める。

「むっ、【擬態迷彩(カメレオン・カモフラージュ)】か!?」

 人が技術や知識で魔力を操り魔法を使うように、魔物は本能で魔力を操り魔法を使う。想像力次第でいくつもの魔法を発現できる人とは異なり、魔物の使う魔法は限られているが、本能に根ざしたそれを実に効果的に使用してくる。
 虎の体の縞模様は茂みに隠れ潜むのに最適な模様である。元来備わっているカモフラージュ能力を強化する形で、この魔物は魔法を使用したのだ。
 一瞬で
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