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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
ムスタール森林
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な動物がいるからな」

 今回のように災害級の魔物を捕獲するような任務では隊を組む場合があるが、もとより魔物ハンターは単独行動を好む。顔見知りもおらず、法眼の離脱を止める者はいなかった。

「順風よ、逆風よ、廻り巡りて見えざるものの姿を現せ」

 【生命感知(ディティクト・ライフ)】魔法により、大小無数の生体反応を捉える。
 法眼はひときわ大きな反応のあった方向へと向かうと、長大な河にたどり着いた。

「おお、これがムスタール河か。話に聞くよりも遥かに雄大だな、絶景絶景。こんなでかい河は日本にはないぞ。まるでドナウ川……いやいや黄河や長江のようだ」

 ムスタール森林には同名の河が流れている。その流れは極めて緩やかで湖の水が風を受けて波紋を作っている程度にしか見えない。
 その河口三角州(デルタ)は長きに渡る水と陸の迷宮だ。巨大な大河は何百もの流れに別れて他の河川や湖に注ぎ込み、その間に無数の中洲と湿地帯を作る。

「優雅なる水鳥、湖上の舞踊家よ、その軽やかな魂を我が脚に宿せ」

 興の乗った法眼は【水上歩行(ウォーター・ウォーキング)】の魔法を唱え、海原の如き河の上に降り立つ。
 対岸が霞んで見える。まるで湖のようなムスタール河の水上を逍遙と歩いていると突然、目の前で水が噴き上がった。
 黒光りする物体が水面に躍り上がる。
 牛のように巨大な大ナマズだ。
 巨大な口にびっしりと生えた細く鋭い針のような歯で噛みつかれれば体に無数の穴が穿たれ、散弾銃で撃たれたかのようになるだろう。
 それが、襲いかかる。
 人を喰らう大ナマズの(あぎと)が迫る。

「美味そうだな」

 だがしかし、捕食者は法眼のほうであった。



 法眼は山籠りの修行のさいに食料を得るため、野生の動物を解体し、調理する術は心得ていた。
 おのれで狩ったものをおのれで食す。これこそ自然の摂理に則ったあるべき姿であり、山で採れたものを山で食べることに意味がある。山の霊気を浴びた山菜を体に取り入れることで霊力を養うことができる。
 仕留めたナマズを泥抜きしてぬめりも取り、首を斬り落とすと、その切断面に短剣(ダガー)をあてて切り開き、内臓を掻き出し取り除いてゆく。そして切れ目のほうから皮を少しずつ剥いてゆき、引っかかりを作るとそこから一気に剥ぎ取った。
 続いて肉。
 この大ナマズの全身は筋肉のようなもので肉の弾力がすさまじい。また骨は長く丈夫で肉にみっしりと喰い込んでいる。捌くには背骨に沿うようにしっかり刃を合わせて、あばら骨の流れに沿って肉をこそげ取るようにして剥ぐ。
 それでも小骨が多く残るので、これをどうするかが難題だった。

「これは難儀。この小骨の多さ硬さたるや、まるで蛇やウツボのようだな。肉を食べるのはあき
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