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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 24
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って、プリシラ達が建物に入ったと同時にバラバラと散って行った。



 「……ところで、ミートリッテ」
 「はい」
 再び二階へ上がり、次期大司教の執務室へと一直線に伸びる廊下の途中。
 一歩分の距離を置いて斜め後ろに付いて歩くミートリッテに振り返ったプリシラが、真顔で首を捻る。
 「此処に居る間、セーウル殿下の顔色はどうだった?」
 「顔色、ですか?」
 「ネアウィック村に居た頃と比べて、不自然に感じる部分は無かったかしら」
 「…………『課題』、ですね」
 「ええ」
 貴族社会では武力も必須だが、何よりも情報の鮮度と質と量が重要視される。それが取引相手となりうる者ならば尚の事、瞬き一つ、呼吸の間合い一つでも取り逃してはならない。
 人を見る、感じる、覚える、考えるという一種の技術を体に刷り込ませる為、中央教会に来たばかりのミートリッテに与えられた当面の課題の一つが、周囲に居る人間を(つぶさ)に観察して心理を読み解く事だった。
 「特にこれといった不自然さは感じませんでした。相変わらず真面目で落ち着きが無かったです」
 「背後から声を掛けたら過剰なくらい驚かれたとか、顔を覗き込んだら目を逸らして後退ったとか」
 「それは以前からです。人の顔を見て走って逃げるとか、よくよく考えたら失礼な話ですよね。私を何だと思っているのでしょう? 確かに、間近で見ても面白い顔ではないかも知れませんが」
 「……解ってはいたけど、先は長そうねぇ」
 「はい?」
 アヴェルカイン公爵家での生活が功を奏してか、感情はあまり顔に出なくなったものの、ふっと漏れたミートリッテの溜め息で、プリシラが薄く苦笑う。
 「今回は文句無しの不合格よ。探るべき相手の心理を深く考えもせずに「解らない」と口にするなんて、交渉術以前の問題。通りすがりの人をいきなり川に向かって投げ飛ばすも同然の愚行だわ。速やかに改めなさい」
 「あ」
 指摘を受けて青褪めるミートリッテに背を向けて、返事も聞かずに歩みを進めるプリシラ。
 冗談では済まされない失態を犯した時、彼女は必ずミートリッテと距離を置く。
 「今の貴女に付き合っている暇は無い」という意思表示だ。
 勿論、拒絶的な行動の裏には後継者への期待と愛情が込められているのだが、自立への過程を見守ってくれる目を求めていたミートリッテには相当キツイお仕置きとなっている。
 「……っ失礼しました! 以後、十分に気を付けます!」
 やらかしてしまったと俯いて立ち竦み。
 けれど、直後に持ち上げた顔を自身の両手で挟み込むように引っ叩き、深く腰を折ってから早足で第一補佐の定位置へ戻ったその顔に、恐怖や怯えや後悔の気配は無い。有るのは自信とやる気に満ちた仮面だ。
 少しずつ着実に成長を続けている愛し子の真っ直ぐな
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