純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 24
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vol.31 【異変】
時は経ち、プリシラと護衛騎士達が中央教会へと帰る朝。
「……あら?」
玄関から入って右手側、一番手前にある少し手狭な部屋の中で。
プリシラの首がこてんと傾いた。
その部屋は、食用以外の各種薬剤を保管しておく為に整えられており。
住民達が必要な時、必要な分だけ使えるようになっている。
毎日の仕事などで怪我や虫刺されが絶えない彼らは、今日も仕事の前に、いくつかの虫除けと外傷用の洗浄液を持ち出していたのだが。
「おい、クソババア。ベルヘンスが外で待ってんだから、とっとと行けよ」
開け放しておいた扉の一歩外側で。
腕を組んで立つクァイエットが、心底面倒くさそうに悪態を吐く。
彼の顔が青白いのは、相変わらず甘さしか感じない味覚のせいだ。
今の彼の味覚は、騎士達がどんなに美味しい料理を提供しても、その料理すべてを彼が嫌いな味に強制変換してしまう。
飲食するたび、目に見えてげっそりと窶れていく様は、まるで悪魔にでも取り憑かれたかのようだ。
それでも、彼が孤児院から逃げ出そうとする気配はない。
住民と仲良くしようとする気配も見せないが。
「ねぇ、クァにゃん」
「その呼び方を定着させようとすんじゃねえ!」
「この瓶の中身、どう思う?」
「無視か、この野郎。……ったく、そのかゆみ止めがなんだって?」
「……ほら」
イライラした様子で頭を掻きながら隣に立ったクァイエットの眼前へ。
手に持っていた円筒形の小瓶を突き出すプリシラ。
本体の太さは成人女性の手首程度、長さは上下に親指と人差し指を当てて持ち上げられる程度で、上部には回して填める型の銀色のフタ。
透明なガラスの半分ほどを満たす液体は濾過された水のように透き通り、左右に振ればちゃぷちゃぷと小気味好い音がする。
器の中で飛び散る水滴は、液体の粘度が低いことを表していた。
「おかしいと思わない?」
「……どこが。昨日と変わってないだろ」
目の前に突き付けるな鬱陶しい!
とでも言いたげに奪い取ったそれを、元の棚に置き直すクァイエット。
「よく見て」
「しつこいな」
定位置へと戻され、安定した台の上で次第に落ち着いていく水面。
上部に貼り付いていた水滴も、やがて液体の中へと滑り落ちて。
空気と液体の境は、やはり器の真ん中辺り。
「おかしなトコなんかねぇよ。どう見たって昨日と同じだろ」
「そう。昨日の朝と比べて、変化がまったくないのよ。それがおかしいの。今、この孤児院に何十人居ると思う?」
「はあ? 知るかよ。興味もない」
「でしょうね。でも、孤児院の生活環境で、かゆみ止めがどれだけ有用か、くらいは、クァにゃんにも分かる
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