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魔術師ルー&ヴィー
第二章
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 ミルダーンは八つの区画に分かれ、それぞれを公爵が治めている公国である。
 しかし、首座にアムネス大公ことゴッドフリート=フィリップ・フォン・アムネスを据え、他七公は彼の意を汲む形で政を行っている。それはゴッドフリートの祖であるライオネル・アムネスが八つの国をまとめ上げ、善政を敷いて民を守ったことに由来し、現首座たるゴッドフリートもまた、祖を尊び、民を中心とした国造りをしていた。
 それでも王国としてではなく、飽くまで公国としているのは、他ならぬライオネルの意志であり、アムネス当主になる人材すら事細かく言い残している。
 現八公の中で、二つの家にはリュヴェシュタン貴族との血縁があり、互いに良好な関係を保って今に至る。
 その一つであるノイス家には、ルーファスを養子としたシュテンダー侯爵家との血縁があり、ルーファス自身も幼い頃に何度か訪れたことがあった。
 それ故、彼は一先ずノイス家へと向かい、当主であるマティアスと面会した。
「よぅ来られた。全く、こんなに大きくなってのぅ。最後に会ったのは…もう十年以上も前じゃな。ほんに薄情な奴め。」
「申し訳ありません。生憎、弟子と旅をしておりまして。」
「ほぅ。旅ならばこのミルダーンでも出来るではないか。時折マリアーナが手紙を寄越してくれるが、全く…放蕩息子めが。」
「本当に…申し訳ねぇからもう止めてくれよ!」
 ルーファスはもう我慢ならず、降参と言うように両手を挙げて言った。
 そんなルーファスを見て、ノイス公は大きな笑い声を上げ、ウイツもヴィルベルトも噴き出してしまったのであった。
 だが、懐かしき再開は束の間…ノイス公はルーファスらからアリシアの事と今の大陸の現状を聞かされ、余りのことに眉を顰めた。
「こちらにもコアイギス殿から詳細は伝えられておる。が…よもやそこまで大事になっていようとはのぅ…。」
「こっちにはまだ被害は出てねぇんだな?」
「少なからず妖魔は出たが、然したる被害はなかった。だが…遅かれ早かれ、アリシアと言う娘を見つけ出さねば、この国とて危うい。大公に直ぐ書簡を認める故、お主の魔術で届けてくれ。」
「分かった。」
 そう会話を交わした後、マティアスは机に向かい書簡を認め始めた。
 事は急を要する。それは誰しも分かってはいるが、何年も…いや何十年も念入りに仕立てられたアリシアの復讐劇は、そう易々とは止められない。それはルーファスだけでなく、ゾンネンクラールにいるマルクアーンも、リュヴェシュタンのコアイギスも、ゲシェンクにいるシュトゥフも…皆同じ様に考えている。そして各地で各々の役割を果たしているのである。
 だが、ここで思わぬ事態が起こったのである。
「旦那様、大変で御座います!」
 主の返答も得ず、急に扉を開いて駆け込んで来たのは、執事のマイケンであった
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