第二章
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て外へと逃がす…それが本来の彼女の姿であった。それは偏に、今は名も知られてはいない乳母の愛情の賜物であった。
しかし…アリシアが二十一歳の時、彼女は突如城から姿を消した。恐らく…育ての親である乳母が亡くなった事で、全てを知ってしまったと考えられた。
当時は既に戦が始まっていたが、妖魔の研究は手付かずであった。故に小競り合い程度で済んでいたため、クリミアムは密かにアリシアを探させた。これ以上戦が大きくなれば、探せなくなることは分かっていたからであるが…結局見つけ出すことは出来なかった。
親であるネヴィリムもまた、皇位継承権を父のクリミアムに返上して探しに出ようとしたが、それは強硬に止められている。これ以上国に揉め事が起これば、他国に侵略の機を与えかねない…シュテットフェルトを失っていることもあり、ここでネヴィリムまでも失う訳にはいかなかったのである。
クリミアムには側妃も含め二十三人の子供がいたが、男児で成人したのは四人で、他十一人は全て女児のみが成人している。シュテットフェルトが亡くなった今、男児は三人しか残されておらず、戦が長引けばこの三人とて命が危うくなるのである。
「戦時中で女児は全て降嫁させられ、皇族以外に嫁いだ。アリシアとて、この子孫までは殺めまいて。だがのぅ…これだけ大それた事をする娘ではなかった。儂は十五の時と二十の時に会ぅとるが、実に聡明で愛らしい娘じゃった…。」
「では、彼女が出奔した時は…。」
「あぁ、儂の所にも直ぐに連絡が入ったがのぅ…。こちらも見動きが取れぬ状態で、幾人かの魔術師らを探索に向かわせたんじゃが…見付からなんだ。」
「そうでしたか…。」
ウイツが眉を顰めてそう返した時、密かに探索魔術を行使していたヴィルベルトが口を開いた。
「ウイツさん、見付けました!この館の北西にある塔の中です!」
ヴィルベルトが見付けたものとは、妖魔を召喚している陣である。彼は師であるルーファスが行った通りに妖魔自体を探査に掛け、湧き出す場所を探していたのであった。
だがそれ以上に、ヴィルベルトはウイツと共に結界も張っているのである。故に、ウイツは彼の力量が自分を上回っている事に驚き、そして喜んだ。
親友の愛弟子が優れた魔術師へと育っている…弟子のいないウイツにとっては、ヴィルベルトは特別な存在と言えた。
「よし、行こう!」
そう言うや、ウイツはサミュエルに礼をとり、ヴィルベルトと共に北西の塔へと向かった。
その途中には、妖魔の屍と人の屍が転がっていたが、ヴィルベルトはそれを見て何も感じていない自分を嫌悪したが、それを察したウイツはヴィルベルトに言った。
「ここは戦場だ。情は後回しにしないと生き残れないんだよ。亡くなった者達は後で必ず葬ってもらえる。だから、今は出来ることをしよう。」
「はい!」
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