第二章
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かるが、その場にいた全ての魔術師はサミュエルと共にそれを退けながら別の魔術師らの元へと向かう。
そんな中、サミュエルと魔術師らの頭上で凄まじい魔術が行使された。
一つはサミュエルが放った炎の魔術と同じだが、桁が違った。もう一つは風の魔術で、妖魔を切り裂いた。この二つが同時に行使されたため、数え切れない程の妖魔が灰燼に帰した。
「お主らは…。」
彼らの前に現れたのは、ヴィルベルトとウイツの二人であった。ヴィルベルトが炎の、ウイツが風の魔術を行使したのである。
見ず知らずの二人が現れたことに、サミュエルも魔術師らも驚いてしまったが、ウイツが事情を説明するや、サミュエルは溜め息をついて言った。
「そうじゃったか…あのアリシアがのぅ…。」
「アリシアがって…面識がおありのようですね。」
ウイツがサミュエルへと問い掛ける。すると、サミュエルは済まなそうな表情を見せて返した。
「ああ…随分と昔の話じゃが…。先の戦の起こる前…もう半世紀程経つじゃろうか…。あの娘は、ゾンネンクラールの城に作られた地下施設に、半ば監禁同然の生活を強いられておった。それを知りつつも、儂には何も出来なんだ…。」
皇国期最後の皇帝クリミアム=オットー・ファン・ゾンネンクラールの妃ヘレナは、十二の時にクリミアムに嫁ぎ、十八の時に第四皇子であるネヴィリムを産み落とした。その後、彼女は乳母に子を任せた切り、全く会いに来ることはなかったと言う。
しかし、ネヴィリムが十一歳の時、何故か息子の寝室に入り…床を共にした。
実の子を犯したのである。
では、なぜそれが分かったかと言えば、ネヴィリムの寝室へとヘレナが入る所をメイドに目撃されていたからである。
普通なら、ネヴィリムの方が気が触れて母に…会うこともなかった母と言う女性を犯したと考えられようものだが、何故そう考えなかったのか…?
それは、この時には既に、ネヴィリムはマリアーナを好いていたからである。それはメイド達の中で知らぬものはなかった。そこにシュテットフェルトとマリアーナの婚約が正式に発表され、それを慰めようと…と言う経緯があったのである。
だが、それを知ったクリミアムは怒り、ヘレナを地下牢へと幽閉したのであった。そこで生まれた女児は、地下牢とは反対側にあった地下の施設で乳母を付けて育てることにした。地下とは言え明り取りも多分にあり、かなり浅く作られていたと考えられる。
子に罪はない…そうクリミアムも考えたであろうとは思うが、妻が息子と情を交わすなど穢らわしい以外の何ものでもなかった。故に…これが精一杯の温情と言えたのである。
しかし…これが仇となった…。
人知れず育てられたアリシアは、乳母の温もりしか知らずに育ったが、聡明で明るい女性に育っていった。心優しく、虫さえも殺すことを躊躇っ
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