【願いの先へ】
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”じゃ、駄目なんだって──」
「う、うまく、言えないけどな……持ってる、持ってないは別にしても君は、君でいいんだと思う。例えばほら、俺なんかしょっちゅうヒナタ様の風呂を覗いてるけど、君の方の兄さんはそんな事しないだろ絶対。って……例えになってないかな」
「ふっ、ふふ……。そうだね、私の方のネジ兄さんなら絶対そんな事しないもの」
泣きながらも笑顔を見せたヒナタを見て別人側のネジは安堵したが、同時に思い出したのは、家柄の事なんかどうだっていい、自由になりたいと泣きながら高笑い、自暴自棄に振舞って散々罵声を浴びせてきた事のある従妹の悲痛な姿だった。
「“俺達”の願いは……違うようで似ていて、繋がっているのかもしれないなぁ」
「え……?」
「大丈夫だ、ヒナタ様。……君の兄さんはもうすぐ、君の元に還って来るから」
ネジは片手を自分の胸部に当て、ヒナタを安心させるように微笑んだ。
……今目の前に居るのは別人の従兄のはずが、この時ばかりは確かに、ヒナタにとっての“ネジ兄さん”に想えた。
「──やるなぁネジ兄、ちっとでも油断するとやべーわ!」
「そちらこそやるじゃないか、次期当主なだけはある」
手合わせを始めて大分経つが、二人の息は大して乱れていない。
「なぁネジ兄、そっちじゃアンタが次期当主に決まってんだろ?」
「いや、俺は──」
「んだよ、呪印を持つ分家だから当主になれないとかナシだぜ!!」
別人側のヒナタの強力な柔拳がネジの頬を掠める。
「 ……まぁ別に、次期当主とか関係ねーよな。アタシ達は自由になる権利がある。──なぁネジ兄! アタシはアンタと一緒に居たい、アンタと生きていたい!! だから───!? おい、ネジ兄!!」
不意に前のめりに倒れだした従兄を、ヒナタは咄嗟に抱き留める。
「ったく何だよ、人が告ってる時に寝落ちするなんざ……。ネジ兄、大丈夫かよ」
すぅーっと大きく息を吸う音が、胸元に抱き留めた従兄から聞こえた。
「──やっぱりヒナタ様は、いい匂いがしますねぇ」
「……おい何だネジ兄、いつの間に元に戻ってやがんだよ。少しはしんぺーしてやってたんだぞこっちは」
ヒナタはネジを離すまいとするように、力を込めてぎゅっと強く抱きしめる。……その声は、微かに震えていた。
「すいません、ヒナタ様……。けどあなたも酷いですよ、もう一人の俺の方に告白するなんて」
「は? んだよ聴いてたのか? いいじゃねーか、どっちも全然違うワケじゃねーんだから。──“アタシ達”の願いは、違うようで似てるんだ。……そうだろ」
「ハハ、そうですね……。控え目なヒナタ様も、良かったなぁ」
「んだとコラ!
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