三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第34話 一方、その頃
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「ダラムでの実験準備は計画どおりに進んでおります。まもなくよいご報告ができますかと」
ひざまずく黒ローブの男の中間報告に、ダヴィドレイはうなずいた。
「順調だな。今回の実験で、アンデッドになっても魔法が使えることが証明できれば……」
ダヴィドレイは一度男に背を向けた。
眼前には、玉座と、大魔王の白骨が入っている棺。
「ふたたび大魔王の名で世界に号令できる日。刻一刻と近づいてきている」
この『魔王の間』は、両側に壁がない。
立ち並ぶ柱のみの設計で、大きなバルコニーと直結になっている。
左右から十分に入ってくる光に加え、天窓からも入ってくる光。
ダヴィドレイが着けている銀の胸当てが、誇らしげに輝く。
「私もいよいよ人間をやめられるかと思うと、興奮で心臓が波打つというものです」
その声にふたたび体の向きを直し、報告の男に顔を向けた。
笑顔こそないものの、ダヴィドレイの表情には期待がはっきりと浮かんでいる。
「お前はそのために我々の仲間になったのだったな……。まあ、アンデッドになったら波打つ心臓もなくなる。今のその思いも楽しんでおくがよい」
報告の男は「はい」と言い、その切れ長の瞳を鋭く光らせた。
顔は面長で、髪は黒い。マーシア町長をアンデッドにした二人組の片割れである。
「ところで。エリファス殿の身が心配ですが、一人で行かせてよかったのでしょうか?」
きっとエリファスはハーフドラゴンの少年と戦うことになる。そう考えていた黒ローブの男は、懸念を口にした。
「よい」
が、ダヴィドレイは表情を変えず、短く答えた。
「失礼いたしました。人間である私には、ドラゴンの力、底が見えませんでしたので……。エリファス殿はアルテアの民では群を抜いた怪力持ち。ドラゴンといえども鎧袖一触でございましょうか」
「いや、それは誰にもわからぬ」
「……?」
「私ですらまったく推し量れぬ部分だ。かつてドラゴンは魔王軍の一員であったが、その強さがどれほどのものかを正確に知る術はなかった。あれは誇り高き種族。気軽に手合わせを頼むことなど誰にもできなかったからな。わかっていたのは、ただただ強いということだけだ」
「それでも『よい』わけですか?」
「相手がドラゴンでは、戦闘力の及ばない者が何人ついたところで無意味だ。エリファスの邪魔になってしまうだけだろう」
ダヴィドレイは続けた。
「それに、ドラゴンはかつて勇者を名乗った人間たちによって滅ぼされている。ゆえにエリファスが簡単に敗北するとは考えたくないものだな」
「と、おっしゃいますと?」
ドラゴンが勇者に滅ぼされたことと、エリファスがドラゴンと戦えるであろうこと。この二つがどう結びつくの
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