三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第34話 一方、その頃
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んの思いは成就せん。だからまた、落ち着いたらここに来るとよい」
「それは、私の力では達成が無理ということですか?」
「そうではない。ワシは優しくない人間に魔法など教えんからの。そういう意味じゃ」
「買い被りです。私は優しくはなれませんよ」
アランは笑うと、
「では、いつまでもお元気で」
今度は、深々と頭を下げた。
* * *
村をあとにしたアランは、馬をゆっくりと歩かせ、人のいない街道を進んでいった。
目指すは、南だ。
「待て」
「はいはい。待ちますよ」
声が飛んできたのは、横の林からだった。
アランは声の方向を向かずに答えると、馬から降りた。
馬の頭をポンポンと柔らかく叩き、声とは逆側の林の木に、綱を引っ掛ける。
そしてゆっくりと道に復帰した。
林から現れたのは、さほど背の高くない黒ローブの男だった。
顔はやや丸い。普通の中年男性のようにも見えたが、その耳は尖っていた。
「その耳は……人型モンスター、ですかね?」
知識としては頭の中にあったが、実際に目にするのは初めての耳の形。アランの言葉は自然と疑問形となる。
だが、男はそれを無視した。
「お前はハーフドラゴンの少年に指示を出していた男だな」
アランがその男に持った第一印象として『初めて会った気がしない』というものがあったが、その問いで納得した。
「ああ、マーシアの町長の自宅で顔を隠していたほうですか。なんとなく雰囲気に覚えがある感じはしましたが、気のせいではなかったわけですね」
アランはクスッと微笑んだ。
「現れたのがあなたでよかったです」
「よかった、だと?」
「はい。タイミングがタイミングですので。私の師匠が誰かを遣わして引き留めにきたのかと一瞬考えてしまいました。違っていてよかったです」
「……」
「で、私になんの御用でしょう……というのは、聞く必要はなさそうですか」
林からわらわらと出現した、剣と盾を持ったアンデッド。
道の前後をふさぐように広がった。
その数、十体以上。
「上位種アンデッドですか。作ったのか連れてきたのか知りませんが、ずいぶん用意しましたね」
一つ息を吐き、アランはやや真顔になった。
「このぶんですと、シドウくんのところにも暗殺隊が?」
「ハーフドラゴンのことか? あっちのほうは、まずこちら側につくよう勧誘予定だ。今ごろ我々の強力な同志が接触しているはずだ。もちろん拒否すれば殺す段取りだがな」
「そうなのですね」
アランは腕を組み、短く答えた。魔法使いとしては珍しく帯剣しているのだが、それには手をかけない。
「人の心配をするなど、ずいぶんと余裕だな」
「え? 心
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