三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第34話 一方、その頃
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かわからないため、黒ローブの男は聞き返した。
「大魔王様が存命のころ、勇者によって魔王軍幹部が次々と討ち死にしていたため、その対策が急務となっていた。
エリファスはその対策の一つ。勇者と戦うために私が作り出した$士なのだ」
普段はあまり感情を露わにすることがない黒ローブの男。その細い瞳が、見開いた。
「だが、人間の勇者の進撃速度は我々の想定をはるかに超えていた。彼は間に合わなかったのだ。彼が成長する前に大魔王様は討たれてしまい、結局その役割を果たすことはなかった」
「……」
「そのハーフドラゴンが大魔王様の復活を妨げようとする存在なのであれば、彼はようやく与えられた使命を果たす機会に恵まれたことになる。
勝つ……最低でも相打ち……。そうでなければ、彼は生まれてきた意味がない」
「驚きました。しかし作り出した≠ニいうことは、何か特別なことをされたということですか」
「まあ、しているな」
「私が知る必要はないと思いますので、その内容はお聞きしませんが。本人はもちろんご存知ということで?」
「彼が物心ついたときに教えている。いずれは大魔王様の親衛隊長になるはずだった、というのはな」
「では、それ以外は教えていない、と……」
「この世には知らないほうが幸せということもある。おかしな話ではあるまい」
* * *
王都ダラムより西側に離れた、川沿いの小さな村。
そのさらに外れにある古ぼけた小さな家に、長身で赤髪の旅人が訪れていた。
「お久しぶりです。お師匠様」
「おお、アランか……! 久しぶりじゃの」
木の扉から姿を見せた老齢の男。やや曲がった背中はそのままに、首から上を起こして驚き、顔を崩した。
そして中途半端に開けていた扉を完全に開き、家の中にアランを招き入れた。
古く小さな丸テーブルを挟み、かつての師弟が向き合った。
「まだここにお住まいだったのですね」
「そうじゃよ。居心地はよいし、もうどこにも行かんつもりじゃよ」
アランはけっして広くない室内を見回した。
「お師匠様が望めば、もっとよい暮らしができましたのに。大都市で豪邸を構えるか、いや、その気になれば王位すら喜んで譲位する国もあったかもしれません。なにせ――」
壁には濃緑のローブがかかっており、棚の上にはやはり濃緑のとんがり帽子。横には宝玉がついている杖が立てかけられていた。どれもかなり古びている。
「――かつて勇者様とともに世界を救ったという大魔法使い、ですからね」
「フォッフォッフォ。ワシがそんな柄でないのを知っておるから、お前さんはまたこの家に来てくれたのじゃろう?」
独特な笑いかたで返す老人。アランも柔らかい笑みを返した。
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