511部分:冷たい墓石その十九
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冷たい墓石その十九
「けれど。あいつに浮気っていうのは」
「ないね」
桐生ははっきりと言い切った。
「それだけは絶対にね」
「けれどよ」
それでも奈々瀬は言った。眉を顰めさせたままで。
「あいつがお見舞いに行ってるのは間違いないわよ」
「そうよね」
「それはな」
皆奈々瀬のその言葉にはその通りだと頷く。
「間違いないのよね」
「そうなんだよな」
「確かによ」
奈々瀬はここで野本を見る。今さっき彼女ではと言った彼をである。
「野本の言ったことは絶対にないわよ」
「やっぱりそうかよ」
「絶対にね。浮気をする奴じゃないから」
このことは皆がどう考えてもだった。正道がそうした人間だとは想像もできなかった。まさか、とは思ってもそれはすぐに打ち消されてしまうものであった。
「それだけは言えるわ」
「それでも。何か」
明日夢は正道がそうした人間でないことを理解しながら。そのうえで眉を顰めさせて言うのだった。
「引っ掛からない?」
「引っ掛かる?」
「どういうこと?それって」
「彼女よ」
言いながら彼女もまた野本を見るのだった。
「彼女よね」
「まあ俺も軽く言っただけだぜ」
野本は自分の言葉に対してもという意味合いで否定したのだった。
「実際は俺だってあいつが浮気するなんて思えねえさ」
「その通りよ。けれどなのよ」
「けれどって」
「何だよ、その引っ掛かるものって」
「彼女位しかいないわよ」
明日夢はこう言うのだった。
「彼女位しかね」
「っていうと?」
「今のあいつがお見舞いする人は?」
「そうよ。そうした人しかいないわよ」
明日夢が言うのはこういうことであった。
「だって御家族もお友達もそういう人いないんだったらね」
「だよね、確かに」
桐生は明日夢の今の言葉に納得した顔で頷いた。
「そういう立場の人位しか」
「だから結論から言うと」
明日夢の推理は続く。しかもかなり鋭いものがだ。
「そうした相手っていうと」
「未晴!?」
「あいつが!?」
皆の顔が一斉に強張った。緊張の稲妻がその間を走る。
「あの娘がって」
「まさか。そんなことはよ」
「有り得ないとは思うわ」
「っていうか未晴って」
「風邪でしょ?」
五人はあくまでそう信じていた。それを実際に言葉にも出す。
「こじらせて肺炎になって」
「肺膿だったかしら」
そうした違いはここでは微々たるものであった。
「だからそんなの」
「それによ。今は命に別状がないっていうけれど」
五人は何故かその言葉が必死なものになっていた。自覚していなくとも。
「面会謝絶なんでしょ?」
「それで何でお見舞いにって」
「そうよね。ないわよね」
明日夢も彼女達に対して応えはし
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