第二章
[8]前話
その彼女達を見つつそうして空子に尋ねたのだ。
「食べものですよね、彼女達」
「丼は食べものだ」
空子の返事は実に素っ気なくすらあった、これ以上はないまでにあっさりした返事であった。
「わかるだろう」
「いえ、ですから女の子ですよ」
「安心するのだ、女の子を食べるということは」
ここでだった、空子は。
その赤く長い舌を出して己の口の周りをベロリと嘗め回しそうして淫靡な笑みを浮かべて助手に答えた。
「わかるな」
「えっ、そういう意味で食べるんですか」
「よりどりみどりだ、君はどの娘がいい」
「あの、博士まさか」
「私は男の子もいいが」
少女達を見る目は実に危険だ、もう今にも襲い掛かりそうである。
「女の子も好きだ」
「どっちもですか」
「どの娘も美味しそうだ、果たしてどの娘からにしようか」
「駄目ですよ、丼は丼ですよ」
助手は常識から空子を止めた。
「交際していないとそういうことしたら駄目ですよ」
「丼でもか」
「丼でも女の子です、そんな風にしたら駄目です」
「真面目だな、じゃあ交際ならいいのか」
「はい、女の子は女の子ですから」
そこは譲れないと言うのだ、助手は法律まで出したので空子は仕方なく丼が女の子になった彼女達を人としてしっかりと生まれた経緯を公表し日本国民の国籍や権利の申請をした。このことで世論は少女達を人間としていいのかどうか議論が白熱したが結局人間ということになり。
少女達はそれぞれ日本国民となりやがて彼女達を心から愛してくれる人達と素敵な恋愛を送ることになった。助手はこのことに喜んだが。
空子は残念そうにこう言った。
「折角皆食べたかったというのに」
「駄目ですよ、ハーレムは」
「君は本当に真面目だな」
「博士のモラルがどうかしているんです」
そこはしっかり言う助手だった、何はともあれ今回は助手の良識が勝った。そうして丼が少女となった彼女達は幸せに『食べてもらえる』ことになった。人間として。
丼娘 完
2019・7・8
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