第ニ話 交流会(前)
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うことをしようとはしなかった。そしてお互いにそれを指摘することなんてことはしない。
「そう言えば、氷絃くん。今日の『歪む世界』はどうですか?」
「ん? あー……相変わらず燃えている中にアイツがいる。今日はアレだ、腕の鎧がなんか……ドラゴンぽくなってる」
「ドラゴン……ですか?」
「そうそう。なんつーか腕の部分だけやたらファンタジーにいるドラゴンの腕みたいな攻撃的なフォルムで爪っぽいのができてるんだよな」
「なるほど……『腕の部分だけがドラゴンのような攻撃的なフォルムに爪』ですね」
カチカチ、と冴空は何処からか取り出した小さなノートとペンで氷絃の言っていた『歪む世界』を簡潔に分かりやすく書き記していた。
これは彼女の日課で氷絃の『歪む世界』を彼から聞いて毎日ノートに記録している。
「それ、書き始めてどれくらいだ?」
「えっと……小学ニ年生の春からなので九年目です。冊数は四十ニ冊です」
「そんなに俺の『歪む世界』を書いてんのか……そういや、どうしてそんなことしてるんだ?」
「えっと……その……笑いませんか?」
「笑うわけないだろ」
少し恥ずかしそうに目を逸らす冴空に「何言ってるんだ」といった風に氷絃は答える。
「『歪む世界』は契約をする時までずっと観測する人を蝕むんですよね」
「ああ。契約して魔女に格納することで晴れて『普通』を初めてないしは再度見ることができるようになる。それまでは『歪む世界』がつきまとうな」
「それで……氷絃くんが昔『歪む世界』の影響でとても辛そうな顔で私を見ていたから、せめてその『歪む世界』を言葉にして吐き出してくれたら少しは氷絃くんが楽になるかなって。
最初に聞いてみたら氷絃くん凄く安心したような顔をしてたから、いつの間にかノートに書いて、こうして毎日聞くようになっちゃいました」
「つまり……俺のためか?」
「動機はそうですけど、いまはただの自己満足ですよ。あと、少しでも氷絃くんの見ている世界を私も感じたかった。というのもあります」
「そうか……」
初めて聞いた冴空の日課の真意に、氷絃は申し訳なさそうな、しかしとても嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「ありがとな、冴空。確かに、お前のおかげで俺は多分、楽になれていたんだな」
「えへへ……そう言ってもらえたら嬉しいです」
それから交流会は緩やかに、時間の流れと共に進み、残り一時間となった。
氷絃は現在、ベランダに出て夜風に当たっている。流石に冴空とくっつきすぎて学園側から少し離れるようにと警告があったため、冴空は隣にいない。
「やあ、氷絃。ここにいたんだね」
「……なんだ、隆太か。ちゃんと交流会に出ろよ」
「その言葉をそっくりそのまま返すけど」
「俺は『製鉄』お前は『鍛鉄』つまり俺はいても
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