暁 〜小説投稿サイト〜
ユア・ブラッド・マイン─焔の騎士は焦土に佇む─
第ニ話 交流会(前)
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
どーい! セットーン、ヒートがいじめるー!」
「はいはいどうどう。羽矢は可愛いよー」
「……セットンに言われてもあんまり嬉しくなーい!」
「氷絃、ハリセンかなんか持ってる?」
「あるぞ」
「あるの!? 待ってー! セットン許してー!」

 そんなコントを繰り広げていると、時間はもう交流会開始の五分前となり、大部屋の扉が開いた。フロアで待っていた生徒たちが次々と入り、開始時間一分前で全員が大部屋に入ったことが確認された。
 大部屋はニ百人もの候補生達が入室してもなおまだまだ人が入れるほどの広さだ。

 全員が雑談を始める中、静かに一人の齢三十代後半から四十代前半に見える男性がステージ状になっている所へと登った。鋭い目付きに眉間の皺、それが威圧感を与える。
 その直前──姿が見えた瞬間に全員が静まり返る。男性──黄劉誠也の方に生徒たちは視線を向ける。
 彼はマイクを取り、始まりの言葉を紡ぐ。

『全員、知っていると思うが今一度自己紹介をする。学園長の黄劉誠也だ。本日は一人も欠けることなく候補生全員が集まった事を大変喜ばしく思う。
この交流会は『強者』を作り出すためのモノだ。お前たち候補生は『製鉄師や魔女(強者)』でも『普通の人間(弱者)』でもない半端者達だ。私は、学園は、否、この国は『強者』のみを欲している。『強者』となるため、この場を有効活用してもらいたい。以上だ。これより三時間、親睦を深めてくれ』

 黄劉が降壇すると、もう何度もこの交流会を経験している生徒たちが食事を取り始める。一瞬で数秒前の静けさとは大違いの賑やかさになった。

「さーて、どんな飯があるか……」
「氷絃くん、あくまでも今日は交流会なんですよ。ちゃんと企画を全うしてくださいね?」
「話しかけられたら応対はする。ま、『製鉄』の俺と契約をしたがる魔女候補はいないだろ」

 胸ポケットに着けた『製鉄』位階を示すブローチを指して自嘲気味に氷絃は嗤う。その彼の手を強引に引っ張り、冴空は真剣な眼差しで氷絃を見る。

「いますよ。少なくともここに一人、ずっと氷絃くんと契約したい魔女候補が」
「……はいはい、ありがとな」
「むぅ……いつも契約の話をすると適当な返事をする……」

 ジト目になる冴空から目を逸らした氷絃は料理を見渡す。彼らのいる一角は中華料理が所狭しと並んでおり、独特の匂いが食欲をそそらせる。

「冴空は何を食べる?」
「うぅ……麻婆豆腐ください!」
「はいよ」
「ありがとうございます」

 冴空に麻婆豆腐を取った皿を渡し、氷絃は餃子を取って食べ始める。最初はこうして用意された食事をつまみ、時間が経ち始めたら積極的な生徒から話かけに行く。それが交流会の大まかな流れだ。
 しかし、氷絃も冴空も自分から話かけに行くとい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ