第1話『終わり始まり』
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無為に過ごしていた。
「……帰ろうかな」
ホームルームが終わってから約10分が経過した。 一向に部員たちが姿を見せない。
もうホワイトボードに最低限の連絡事項だけ書いて帰ってしまおうと思い、マジックを手に取ったその時。
コン、コン、と。 控えめにノックをする音が響く。
「お疲れさまです、先輩」
続けて扉を開けて入ってくる可憐な声。
「お疲れ立奈。 今日はもう解散でいいか?」
「よくないですよ、私来たばっかじゃないですか……」
仮にも部長の、余りにも意欲のない発言に思わずと言った様子で溜息をつく。
「えっと……輝橋先輩と立石先輩は?」
「立石は陸上部の方行ってから来るってさ。 バカは忘れ物」
「そうですか……」
「……」
「……えっと……」
「無理に会話を繋げようとしなくていい」
「……はい」
それでも、何か話題はないかと立奈はキョロキョロと部室を見回し、その度に白銀の髪が揺れる。
そう、白銀。
彼女には……立奈 唯には所謂“普通”の少女と少し違う点があった。
例えば髪色。 年頃の少女らしい肩にかかる程度の髪は、脱色しているわけでも無いのにほとんど白に近い色をしている。
或いは瞳。 一見日本人らしい黒い瞳だが、よく見ると少し灰白色が混じっている。
そして体型。 別段おかしいという訳ではないが、高校一年生と言われると小柄な気もする。
これらの特徴を併せ持つ存在。
即ち、立奈唯は“魔女”と呼ばれる体質の少女なのだ。
とは言っても外見に多少の差異が見られるだけで、実際は普通の女の子となんら変わりはない。
話題探しを諦めた立奈は、隅の本棚に適当に積まれたアルバムの一冊を手に取った。
慣れた手つきで薄いアルバムのページをめくり、たまに手を止めては収められた写真をじぃっと見つめる。
「よく飽きないな」
そんな彼女の様子に嬉しいような、こそばゆいような感覚を覚えながら茶化すように言う。
写真部には部員の撮った写真を大雑把に代ごとに分けてアルバムに残す風習があった。
彼女が手に取ったのは玲人たちの代……というか殆ど玲人の撮った写真が収められたアルバムだ。
「当然です。 私は先輩の写真のファンですから」
「そいつは嬉しいな。 あー、そういえば立奈の気に入りそうな写真がこの辺のアルバムに……」
話題を逸らすようにアルバムを開く。
その時、ひらりと一枚の写真がこぼれ落ちた。
「先輩、何か落ちましたよ」
「ん? あぁ、これは……」
そこに写っていたのは夜明け頃の平原。
登りつつある太陽が美しいグラデーションを空に投影し、その光を受けて
輝く巨大な水晶の中で、龍が眠っていた。
「この写真……合成、じゃない……?」
「あぁ、俺の爺さ
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