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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
啓蒙
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みたいに」
「おれも」
「わたしも」
「おいどんも」
「ああ、喜んでみんなに教えるよ!」

 このような流れでカートはZクラスの生徒達に魔法を教えるようになった。
 人を傷つける武器としての魔法ではなく、人を助ける技術や知識としての魔法を。



 新時代の英雄、賢者の孫シン=ウォルフォード一行が食堂の席について間もなくすると唐突に周囲の人々が歌声をあげた。

 新たなる英雄を人々は求む
 来たる来たるは、シン=ウォルフォード
 偉大なる賢者の孫、大いなる魔力と共に
 信じよ来たるを、シン=ウォルフォード
 邪なるものは、滅び去る。シン=ウォルフォードの魔法をもって
 偉大なる英雄、シン=ウォルフォード
 闇は去り新たな伝説が生まれる。シン、シン、シン。
 シン=ウォルフォード

「ええ〜、なにこれ恥ずかしい! みんなそんなふうに歌わないで〜、あ〜、恥ずかしい恥ずかしい。俺はそんなこと望んじゃいないのに〜」
「そう言うなよシン。今やおまえはこの国のカリスマなんだぜ」

 アウグスト=フォン=アールスハイド――親しい者からはオーグと呼ばれるアールスハイド王国の第一王子は赤面するシンにとある企てを告げた。

「え? 虎の魔物を生け捕りにしたって?」
「ああ、何人ものハンターを餌食にした災害級の魔物だ。といってもおまえにかかればこの前みたいに瞬殺だろうがな」
「そんなのを生け捕りにしてどうするつもりなんだ?」
「シン=ウォルフォードは騎士養成士官学院の連中が手も足も出せなかった虎の魔物を倒した。虎の魔物と言えば災害級だ。人々は伝聞として知っているが、それがどんなに危険な存在かは実感できないと思ってね、それと同等の魔物を人々の前に公開することでおまえの実力はより正しく世間に伝わるわけさ」
「はあ? なんでそんなことするわけ?」
「ふふふ、みんなにおまえの凄さを知って欲しいのさ」
「ふ〜ん」

 シン=ウォルフォード。その非常識な魔力の高さ、規格外の強さ、余人の想像つかない魔法や魔道具の数々を生み出す叡智。
 アールスハイド王国にとって手放したくない逸材であり、その能力の恩恵を授かりたいところだ。
 だがシンにはその強力な力ゆえに、彼の育ての親であるマーリンから「政治利用しない」という約定があった。これに抵触せず、いかに彼の力を活用するか? オーグはシンの武名を喧伝することで彼の武威を天下に示し、オーグ自身も属するSクラス。ひいてはアールスハイド王国そのものの威光を高めようと画策しているのである。
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