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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
啓蒙
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土いじりなら得意ですだ、任せてくだせえ!」
「おいどんも合力するからもやしを食わせて欲しいでごわす」

 こうして何人かの協力を得て、カートは校舎の周りで菜園作りに着手した。



「トマトとバジルを一緒に植えるとトマトの香りがバジルを食べに来る害虫を遠ざけて、トマトがあまり使わない栄養をバジルが整えてくれるだよ」
「なるほど」
「まぁ、カート様の水耕栽培には関係ない話ですが」
「いいや、勉強になった。ありがとう」
「それなら鉢の表面を覆うように育つ花やハーブも植えると野菜の根を乾燥や寒さから守ってくれるそうだよ」
「よく知っているでごわすな」
「ふぃひひwww オトメの嗜みぞよ」
「うわっ、なんだこの虫は!?」
「虫除けの魔道具、は高くて無理だから虫の嫌いな薬草も一緒に植えよう」

 徐々に形になってくる。こうなると最初に手を出さなかった生徒達も気になって手伝うことになった。なにせ元々ろくな授業などなく暇なのだ。

「もやしとルッコラ、パセリ、チャービル、チャイブ……。とりあえずこんなものか」
「これでカマドウマからおさらばだ!」
「あ痛ッ!」
「どうした?」

 生徒のひとりが誤ってスコップで指を打ってしまったらしい、腫れ上がり血が出ている。

「天の慈悲よ、彼の者を癒したまえ」

 カートが傷に手をかざして呪文を唱えると、その掌が淡く輝き、光に包まれた怪我がみるみるうちに癒されていく。

「お、おお……、お……」

 回復魔法の恩恵を受けた生徒が目を丸くしてそれを見つめる。いや、他の生徒達も驚きの表情でそれを見ていた。

「すげぇ! 本物の魔法だ」
「本物って……、君達も簡単な魔法くらいは使えるだろう?」
「いやぁ、それがその……」

 魔法を忌避するZクラスの生徒達は一般教養の座学こそそれなりの成績だが、こと魔法に関しては初歩のものも扱えない者がほとんどだと告白した。

「下手に魔法が使えると兵に取られる、だから魔法を学ばない。たしかそう言っていたな」
「ああ、うん。……でも、こうして実際に魔法の恩恵に預かると魔法もいいかなぁ、て気になったりして」
「土を削る魔法も、魔法にあんな使い方があるなんて思わなかった」
「ああいう魔法なら使えてもいいかな」
「それに軽石地帯に水を通す方法も勉強になった」
「たしかに、あんなやり方どの教科書にも載っていない。どこで習ったらんだ?」
「まぁ、色々とね。帝国なら一般人が知ればそれだけで死刑にされるような技術や知識が得られる学院で学べるなんて幸運だよ。……魔法も、そんな数ある技術のひとつに過ぎない。なぁ、みんな聞いてくれ。魔法(それ)がすでに在る以上、それを拒んだりそれが無いことを願うのは賢くない、現実的とは言えない。ならどう
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