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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
啓蒙
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「グレソ先生、自習というのならこちらで好きな科目を好きなだけ学んでもいいのですね?」
「ふぁ〜、好きにしろ」

 カートは教師からの了解を得るとクラスメイト達に声をかけた。

「みんな学食の酷いメニューにはうんざりしているだろう? 今日から昼休み前の授業科目は家庭科だ。自炊しよう」
「もうカマドウマには飽きてきたから、賛成ですたい!」
「それはいいけど、材料は?」
「学院内にあるものを利用しようと考えている」
「薬草園から頂戴するつもりならやめたほうがいいよ。餓えに耐えかねてあそこの野菜や果物を盗み食いしようとして何人の生徒が守護獣(ガーディアン)の餌食になったものか……」
「そうじゃなくて、せっかく目の前に川が流れているんだから、あの水を利用しない手はないだろ。水を引いてきて校舎の前に菜園でも作ろうと思うんだ」
「ひゃ〜、重労働だよ」
「か、カート様。おらなんぞが口を挟むのもおこがましいのですが、意見を述べてもよろしいでしょうか?」
「なんだいビーダーマイヤー」
「この辺りの土は学院内でもひときわ土壌の質が悪く、草木の栽培には適していません。それと小川と校舎の間には軽石地帯があるので水を引いてもすぐに吸い取られてしまいます」
「ずいぶんと詳しいんだな……。そうか、君はチャーザー村の農民だったか」
「へい、土いじりのことでしたら他の人よりも多少は知っているつもりですだ」
「軽石地帯か……。それならひとつ考えがある」



 その日の放課後、カートは街の雑貨屋で購入した大量の綿を用意して川辺に立った。

「堅牢なる土精よ、我が前に道を開き汝が領域へと通せ」

 呪文を唱えると川から一メートルほど離れた土が陥没し、小屋へ向けて穿ち進み溝を作る。
 石や土に穴を開ける【隧道(トンネル)】の魔法で川の水を引いて水路を作ろうとしているのだ。
 まるで目に見えない巨大なモグラが土中を掘り進むような光景に、なにをするのかと興味深く見ていたZクラスの生徒達の口から驚きの声があがる。
 彼らにとって、いや彼らだけでなくこの国の多くの人々にとって魔法とは武器であり、火力だ。破壊魔法で地形を変えることはあっても、このようなスマートな使い方は想像の範囲外にあった。
 だが、ビーダーマイヤーの言っていた軽石地帯はどうするのか? せっかく路を開いても水が通らなければ意味がない。
 カートは用意した綿を掘られた地面に丁寧に貼りつけ、川との間を塞き止めていた土も【隧道(トンネル)】で取り除いた。
 水路に水が流れ込む。
 軽石地帯で吸い取られてしまうことなく、校舎まで続く支流が出来上がった。

「こ、こりゃあたまげただ! いったいどうやって水が吸い取られないようになっていますんで?」
「これは『綿埋(わたうずめ)の水流し
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