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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋が奏でし二重奏 X
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この数値だとどれくらい飛行できる?」
『……10分、長くて15分だな』
武藤の低い声色は、いつにも増して低かった。咽喉の奥から絞り出したような色をしていて、事実、この機体が羽田空港まで到着するかどうか──それを思案しているように思える。アリアもその雰囲気を感受しているのか、謹厳な面持ちをしながら、静静としてそれを聞いていた。
自分が握り締めている操縦桿は、最初から羽田空港の方角を向いている。そもそも到着するのに十数分も要さない。そんな風を振り撒きながら、羽田管制塔に向けて最後の挨拶をしておく。
「羽田管制塔、緊急着陸の準備はどうなっています?」
『既に済ませてある』
「そうですか。それでは──3分後に到着しますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます」
『は……?』
今度こそ意味が分からない──といった羽田管制塔の呆れ声を最後にしながら、Bluetoothの通信を切断した。依然として武偵校と繋がっている衛生電話の向こうでは、武藤も苦笑している。アリアも同じようにその赤紫色の瞳を丸くさせて、可愛らしく小首を傾げていた。
『おい、彩斗。3分後に羽田って──正気か? 車輌科にそれはキツイなァ、いくら何でも。テレビに羽田空港の滑走路が見えてるが、飛行機なんかは微塵も見えねェぜ』
「ふふっ、如月彩斗にその言葉はないでしょう──そのまま刮目してなさい。じゃあね」
それだけ言い残すと、Bluetoothの通信に加えて衛生電話の通信をも切断する。コクピット内に聴こえるのは、機体の駆動音──それに綯い交ぜになった、自分とアリアとの吐息だけだった。
羽田管制塔、車輌科の武藤をも茫然とさせるその策は、自分でなければ成し得ないことだと自負している。燃料を無駄にせず、機体の安静を保ち、制限時間内に目的地にまで到着して、着陸するという、その策は。ただ気がかりなのは、自分に飛行機の操縦知識が無いことだけだった。
「ねぇ、《
境界
(
・・
)
》で羽田空港まで移動するけど、君はジェット機の着陸はできる?」
「できない、けど……やる。無理って言ったら、本当に無理になっちゃうもん」
僅かに言い淀んだその裡面には、微細な困惑の色が浮かんでいた。それでも、下手にはぐらかされるよりは気分が清々とする。やるしかない──という開き直りが、そうさせるのだろう。
「あのね」とアリアは続けた。「無理、疲れた、面倒臭い──っていう言葉は、アタシは使わないようにしてる。自分がそう認めちゃったら、有るはずの可能性が全部、消えちゃうから」そう言って彼女は、気恥ずかしげに笑みを零した。「アリアらしいね。でも、大切なことだよ」
そのままフロントガラスの端を見澄まして、左翼から右翼までの全幅を目測で確認する。いつの間にか窓硝子
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