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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋が奏でし二重奏 X
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時は急降下で危うかったが、現在は自分の操縦で安静を保てていること、それらを伝えた。そうして付け加える。「計器を見てて気が付いたんだけど、1つだけ数値がどんどん減少していってるね」
そこで初めて、武藤が沈黙を発した。何かを思案しているのか、喧騒のみが電話口の向こうから聴こえる。数秒後の苛立たしげな舌打ちを皮切りに、また彼は口を開いた。
『……まさか、EICASか? 中央から少し上に付いてる四角い画面で、2行4列に並んだ丸いメーターの下にFUELと書いた3つのメモリがある。そこのTOTALってやつだ』
「わぁ、凄い。流石は車輌科のAランクだね。そう、そこの数値だよ」
『テメェ、そんな呑気にしてる場合か。そりゃあ、あれだ……燃料計だ。ANA600便の内エンジンは燃料系の門も兼ねてる。それが漏れてるってことは、長くは保たねェ』
「なるほどねぇ……」と呟いていると、ふと背後から足音が聞こえた。軽快で歩幅の短い、聞き慣れた──そもそも彼女がどうしてここに来たのか、そんな猜疑心を抱きながら振り返る。
そこには予期の通り、彼女──アリアが居た。武偵病院からここまで駆けてきたのか、息が荒い。ただ紅血に滲んでいた制服の胸元が綺麗になっていて、どうやら新調したらしく思える。
「……君は来なくてもよかったのに。安静にしてなさいな」
「何よ、その言い方。アタシの性格を分かってるんじゃなかったの?」
「だから言ったんじゃない。『来なくてもよかったのに』って。まぁ、来るとは思ってたけどね。……ところで傷は大丈夫なの? 見たところは既に、元のようだけれども」
「皮膚用ステイプラで簡単な手術はしてもらったから大丈夫。それに、わざわざ我儘を言ってまで飛び出してきたのよ? ちゃーんと
鎮痛剤
(
モルヒネ
)
も打ってもらったしね」
アリアはそう言って、胸元を人差し指で軽くつついた。いつものような屈託のない笑みが、彼女の今しがた説明したそれを、如実に証明している。そうして副機長席に座ってから操縦桿を握り、傍らに寝かせておいた男性2人を一瞥した。「この人が機長と副機長さん? 寝てるの?」
自分もつられて一瞥してから、端的に返す。「うん、理子に昏倒させられたみたい。ただ本当に寝ているだけだから、安全面だけを考慮して目の届くところに休ませているだけだよ」
「それよりも──」と付け加える。
「この機体は先程ミサイル攻撃を受けたでしょう。見たところ、内側のエンジン2基が損傷を受けているらしい。そこで車輌科の武藤剛気が言うには、ANA600便のタイプのエンジンは燃料系の門も兼ねているらしくて、漏出が止まらない状態なんだ。今も……ほら、ここの数字」
「440、435……これであと何分くらいは燃料が保つの?」
「武藤、話は聞いてたね?
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