第六幕その七
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一礼してからです、こう言うのでした。
「ドリトルと申します」
「うむ、それで先生よ」
「はい、何でしょうか」
「わらわはそなたに会いたかったのじゃ」
「それでこの度ですか」
「そなたが来るのがわかっていたからな」
だからだというのです。
「この様にじゃ」
「お待ち頂けていたのですか」
「左様」
こう先生に答えます。
「そのうえでな」
「ではそのご用件は」
「うむ、今度猪苗代からわらわの妹が来る」
「妹殿といいますと」
「あれじゃ、義理のな」
「亀姫様でしたね」
「そうじゃ、やはり知っておるか」
「実は今こちらを舞台にした作品の戯曲を書いていまして」
それでとです、先生はお姫様に答えました。
「泉鏡花さんの」
「うむ、あの作家じゃな」
「ご存知ですか」
「ご存知も何もわらわを書いてくれたのじゃ」
お姫様は先生に微笑んで答えました。
「ならばな」
「ご存知であることも」
「当然であろう」
こう答えたのでした。
「今な」
「そうですか」
「そしてじゃ」
さらに言うお姫様でした。
「あの御仁のことも知っておる」
「そうだったのですね」
「左様、よき御仁であるな」
泉鏡花さんのことをこうも言うのでした。
「美がわかっておる」
「それは作品にも出ていますね」
「まことにな、亀姫のことも書いておってな」
「登場されてますね」
「よく書いておる、それで先生よ」
お姫様は先生にあらためてお話をします。立っているそのお姿自体に気品があって人間のお姫様というよりかは女領主という感じです。
「そなたに頼みがあってな」
「待って下さっていたのですか」
「うむ、この度亀姫が来るが」
「この姫路城に」
「その時宴を開くが」
それでというのです。
「この度どういった宴にしようか悩んでいてじゃ」
「僕にですか」
「先生の知恵を借りたい」
是非にと言うのでした。
「それで待っていたのじゃ」
「そうでしたか」
「それでじゃ」
お姫様は先生にあらためて言いました。
「来週またこちらに来てくれるか」
「姫路城の天守閣にですね」
「この日曜にな」
曜日のことも言いました。
「この時間にな」
「わかりました、それでは」
「うむ、先生は非常に博識である」
お姫様は先生のことのことも知ってます。
「この辺りの鳥や獣達がよく話していてな」
「姫様もご存知なのですね」
「そうなのじゃ、妖怪達の噂にもなっておるぞ」
お姫様は先生に優し気で上品な笑顔で告げました。
「そこからじゃ」
「貴女は兵庫の妖怪の総大将なので」
「姫として治めておるからな」
「だから僕のこともご存知でしたか」
「左様」
その通りだというのです。
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