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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋が奏でし二重奏 W
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った伝手も無い。理子がそれを自覚するのは、今から数秒後だろう。
次いで、アリアに目配せする。それは攻撃でも撤退でもない。ただ理子から距離を置けというだけの、朧気な要請だった。それだけにも関わらず、彼女は訝しみもせずに動いてくれる。自分も同様に、理子と距離を置いた。そうして、また──銃を仕舞ってから片腕を掲げるのだ。
「さぁて──そろそろ終幕にしましょうか。この二重奏の、ね」
憫笑し、軽快な調子で指を鳴らす。理子が目を見張ったのは、丁度この時だった。 紡と彼女の四方を取り囲むようにしたのは、またもや虚空に顕現された《境界》に他ならない。
掲げた腕を振り下ろした一刹那に、四方の《境界》は銃弾を吐き出していく。この春時雨も雅懐を抱くには程遠いものの、卯の花腐しの役割こそは果たしてくれる。そう確信していた。
「穿て──《一条戻橋》」
◇
「──これでもなお、続ける気はあるまいね?」
四方の《境界》が吐き出したのは、一連の戦闘で呑み込んだ銃弾──その全てだった。それらは理子の四肢を穿ち、幾重もの残痕を露わにさせている。一帯に散った紅血は血珠となって、壁紙や床のカーペットやらに染み付いていた。
蘇芳
(
すおう
)
に滲みたようだった。
噎
(
む
)
せ返るような独特の臭気に紛れて、硝煙の匂いもまた、この一帯に泡沫のように漂動している。
銃弾は総じて、彼女の身?には触れていない。ただ皮膚を掠めただけで、その単一的な攻撃は致命傷にも成り得ないのだ。ただそれが、同一箇所に数十発ともなれば、武器を扱う上での致命傷になる──彼女の手首と脚元をあしらっていた制服のフリルは裂かれていて、その繊維には紅血が染み込んでいた。銃を狙うだけの力も、立つだけの力も無い。事実上の敗戦を示唆していた。
そうして理子は、寡黙を終始していた。手を床に突いて、脚を崩しながらもなお──眼光炯炯として、こちらを見上げるその金眼だけは、躍起だった。睨み付けるような目付きのその奥に、悔恨と憤懣とを感受する。目蓋のあたりには、それらの紅涙が幾度も幾度も見え隠れしていた。
自分が憤懣と悔恨を抱いたことと同様の理由で、理子もそれを抱いているのだろう。自らの矜恃の誇示のために、宿敵を斃す──曽祖父を越える──それを遂行できなかったことへの。
「……君の能力は並のものではないし、アリアとも肩を並べるほどの価値がある。それでも、結果はこう告げている──ねぇ、何が敗因だったと思う?」
理子にそう諭しながら、紅血に塗れた《緋想》の刀身を有り合わせの布物で拭う。そうして鞘に収めてから、茫然として小首を傾げている彼女を横目に、アリアの傍らまで歩み寄った。
そのまま──僅かに逡巡してから──華奢な肩先を穏和に抱き寄せる。息を呑む
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