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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋が奏でし二重奏 V
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二重奏──理子の告げたその意味を訝しみ、更には推し量ろうと眉を顰める。そこまでを彼女は予期していたのか、それは定かではない。ただ、自分の見せたほんの一刹那の隙に、理子は何かしらを掌に握り締めていて、気が付いた時には既に、それを自分とアリアとに投擲していた。
脚元で小さく鳴いたそれらは、発煙筒のように見える。煙を吐き出す寸前にはもう、2人して個室に戻らざるを得ない状況下に追い込まれてしまった。煙の流れ込む扉の隙間を遮断してから、アリアと顔を見合わせて、互いに異変が見られるかどうかの精査をする。
糜爛
(
びらん
)
剤であるマスタード、嘔吐剤のジフェニル、催涙剤のクロロアセトフェノン、発煙剤のトリクロロアルシン──様々な化学物質の名称が一挙に脳裏を過ぎ去っていく頃には、その憂慮も杞憂なのだと思い至った。「……しまった、まんまと
欺瞞
(
だま
)
された」
顰め面をしているアリアも、小さく頷く。「ただの発煙筒だったとはね」と付け加えた。
「『悲観論で考え、楽観論で行動せよ』──こうなった以上、仕切り直しだよ。やるしかない。……けれど、理子は恐らくここには居ないでしょう。待ち伏せが本来なら有効だけれども、《境界》がある以上、背後を盗られかねないのでそれは愚策。だから……そうねぇ、まだそんなに時間は経ってないし、この近辺に隠れてるかな。いいかい、奇襲を警戒すること」
アリアが納得したのを見届けてから、慎重に《境界》を開く。その先は、つい数分前まで理子と言葉を交わしていたあの廊下だ。予期通り、彼女の姿は見えない。煙を全て吐き切った発煙筒だけが転がっていて、一帯に蔓延していた白煙は、何処かの排気口へと向かってしまったらしい。
それでは、理子は果たして何処に行ったのか──これだけが気がかりになっている。
「……ともすれば、僅かに視認性の悪い階段付近の潜伏、或いは1階全域のバーでの待ち伏せだろうね。不確定要素を残すのは嫌いだから、ちょっと危険だけど階段からバーまで行こう」
そう話しながら、《境界》越しにマニアゴナイフとタクティカルナイフを拾っておく。それらを仕舞ってからアリアを先導するべく、再度べレッタと《緋想》を構えた。
そのまま階段付近まで歩を進め、階下へと向かう段々の奥に目を凝らす。取り敢えず敵影は見えないことを察知した、アリアは控えて連なれといった指示──を出そうとした刹那に、背後からあの45口径の轟音が、途端に鼓膜を劈くようにして鳴り響いた。
条件反射的に振り返り、銃口をそちらへと向ける。《明鏡止水》で捉えたのは、この廊下の最奥──コクピットへと続く扉の付近に潜伏していたらしい理子が、まだ隠匿していたらしいタクティカルナイフをこちら側に向けて投擲したばかりの、その奇襲の様だった。それをアリアが銃弾で防ぐべく
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