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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋が奏でし二重奏 V
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、十数発を一挙に面射撃としてばら撒いている。彼女がそれにいつ気が付いたのかは定かではない。恐らくは特有の直感力でもって、理子の気配を感受したのだろう。
タクティカルナイフの軌道は、明後日の方角を描いていった。理子が投擲する直前に威嚇射撃をすることで、その軌道を逸らさせる──というアリアの目論見だろう。現に理子は、こちらから射線の通らない位置に隠れている。これが好機だと見た彼女は、そのまま肉薄していった。
しかし──退路がコクピットのみでは、理子は防戦一方でお終いだ。だから、ここで必ず飛び出してくる。眼に映る僅かな異変でさえも、即座に察知するだけの能力を求められているのだ。
そうして目論見のその通り、理子はアリアを迎え撃った。両手には愛銃のワルサーP99を構え、虚空を這い回る蛇のような双髪に、またもやタクティカルナイフを握らせて──。
再びの銃撃こそが、まさに
嚆矢濫觴
(
こうしらんしょう
)
だった。窮地を脱すべくアリアに向けられた銃撃から、またもや近接拳銃戦に発展していく。轟音にも似た銃声、空気に融ける硝煙、爛々と焚かれるマズルフラッシュ──2人はその渦中に置かれていた。
同時に自分もまた、その渦中の様に傾注していた。どんな折に加勢しようか、そもそも加勢するべきではないのか、そんなことを脳裏に廻らせているうちに、《明鏡止水》の眼は捉えた。
理子の足払いを回避しきれなかったアリアへ、更なる追撃を彼女は用意している。ここぞとばかりに身をうねらせた蛇は、その口にナイフの柄を咥えていた。それが虚空を斬り裂いていく様を直視するのと同時に、ベレッタから射出した銃弾もまた、虚空を斬り裂いていく。
右螺旋回転を維持したままの銃弾は、側頭部を狙うナイフへと直進していった。湾曲した幅広の刀身のみを的にして、無機物らしく、微塵の逡巡すら見せずに肉薄していく。その弾頭がやがて刀身に触れたところで、幾度か火花が散った。そのまま弾頭が変形した銃弾は跳弾を起こすと、とりわけ何もないだけの壁を抉っていく。しかしナイフだけは、虚空に弾き飛ばされていた。
ほんの一刹那だけ、理子は茫然としたような表情を見せる。ただそれも一刹那だけの話で、次にはもう、余してある片方のナイフを逆袈裟に振り上げた。体勢を整えたアリアは今度こそそれを避けると、弾倉にある残弾の限り、いつもの調子で無理やり近接拳銃戦に引き戻していく。
いつの間にかそのナイフも理子の髪から失せていて、銃のみの近接戦に変貌していた。
そうして、またしても、アリアと理子とはお互いに譲歩しない。弾切れのタイミングも、前回と同様──そうであるならば、ここがまた加勢のタイミングになるのだろう。そう予期する。
「──彩斗、弾切れ!」
アリアがそう叫んだ頃には、彼女との距離は格段に縮まって
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