第一話 製鉄師候補と魔女候補
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っという間に過ぎちゃいましたよ?」
「……いっつも会うたびに可愛い顔でんなこと言うの止めてくれ……心臓に悪い」
いきなり好意を包み隠さずに、当然のように冴空はそう返す。だが、これはもう『いつものこと』なので氷絃は頭を掻いてぶっきらぼうに返答する。
「氷絃くんだって当たり前のように可愛いとか言うじゃないですか、おあいこですよっ」
「俺は事実を言ってるだけだ。お前は俺が知るなかで一番可愛いんだよ」
付き合うどころか契約さえしてない幼馴染とはいえ男女がするような会話ではないがもう何年も似たような会話をしているので二人の間ではこれがデフォルトになっている。
「さて、どうするか。どこか行きたいところとかあるか?」
「えっと、アクセサリーショップに行きたいんですけど、いいですか?」
「ああ、確か魔女候補はなんかのアクセサリー着けろとか言われてたな、いいぞ。店は新しくできたって言ってたところか?」
氷絃が装飾品に興味ないことを知っているため、控えめに聞いた冴空だったが、彼は冴空の考えをしっかりと読み取り拒否することなく答えた。
「そうです。氷絃くん、アクセサリーに興味ないのによく覚えてますね?」
「冴空が言ってたところだからな」
「えへへ……嬉しいです。では、行きましょう!」
「あ、おい。引っ張るなって……」
彼の何気ない一言に顔をほんのり紅に染めた冴空は彼の手を握って急かしながら目的地へと向かった。
聖境学園から出て数分も歩けば店が数多く並んでいる通りに出る。京都市内ではあっても、京都駅周辺のショッピングモールなどには気軽に行けない距離のため、生徒たちはここの大通りを日頃からショッピングに使っている。
そのため、氷絃たち以外にも時間を潰す目的や純粋に買い物を楽しんでいる生徒たちがそこそこ見かけるほどいる。
「おい、見てみろよ」
「『絶姫』じゃん……ってなんだよ、阿國も一緒かよ」
「やっぱ可愛いよなぁ……あー契約するなら絶姫みたいな可愛い魔女がいいなぁ……」
遠くにいる三人組の男子生徒が冴空を見てそんな会話をする。
『絶姫』──冴空は中等部二年の後半からそう呼ばれている。彼女は聖境学園の歴史の中で最も『完成度の高い』魔女として入学され、全生徒に知られる立場に在った。
当然、『強者』を欲する聖境学園は彼女と『鍛鉄』以上の生徒とコンビを組ませようとし、より『最強』の製鉄師を作り上げるために、ある教師の『鉄脈術』を使用して『契約の成功確率』と『相性』を視たところ『鍛鉄』以上の位階の生徒の中に彼女と契約が成功する確率が1%でもある生徒は存在しなかった。
その事が何処からか生徒たちにも伝わり、『鍛鉄』以上の生徒は彼女とコンビを組もうとするアクションさえ起こさなくなった。
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