第四十六話 砥石攻めその一
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第四十六話 砥石攻め
晴信は武田の軍勢を砥石城に向けた、そうして城の前まで兵を進めさせたが彼はその城を見て思わず唸った。
「これはな」
「はい、おいそれとはです」
「攻めることが出来ませぬ」
馬場も内藤もこう言うしかなかった。
「まるで崖です」
「その上に城があります」
「この様な城とは」
「噂には聞いていましたが」
「果たしてどう攻めるか」
「考えものですな」
「そうじゃ、この城を攻めるにはな」
晴信は馬場と内藤に険しい顔で述べた。
「ちょっとやそっとでは無理じゃ」
「相当に何かせねば」
「到底ですな」
「先陣はお主とするが」
ここで晴信は諸将から横田高松を見て述べた、引き締まった顔に白い薄い髭がある六十を越えた男だ。
「よいな」
「今はですな」
「攻めるでない、それでじゃが」
「はい、ああした城を正面から攻めますると」
幸隆は晴信に目を向けられるとすぐに答えた。
「上から石や煮えたぎった油を浴びせられ」
「無駄に兵を失うな」
「崖をよじ登る様なものです」
砥石城を正面から攻めることはというのだ。
「上から落ちる者が下の者を巻き込み」
「余計に落ちる者が増えるな」
「敵にとってこれだけよいことはありませぬ」
「よじ登ってくる敵を好きなだけ攻められるからな」
「左様です、まさにです」
「守るにはこれ以上よい城はない」
「左様です、ですが」
堅城である、だがそれでもとだ。ここで幸隆は言うのだった。
「誰にも攻め落とせぬ城はありませぬ」
「それは決してじゃな」
「はい、ありませぬ」
こう言うのだった。
「正面から攻めずともです」
「策を用いればじゃな」
「よいのです、それでそれがしとしましては」
「どういった策を用いるか」
「実は敵の中に我が一族がいまして」
幸隆の目が光った、そのうえでの言葉だった。
「矢沢家というのですが」
「その者達とか」
「実は前から秘かに話をしていましたが」
「寝返りはさせなかったか」
「こことぞいう時まで、そして」
「今がか」
「まさにその時なので」
それでというのだ。
「仕掛けるべきとです」
「お主は思うか」
「さすれば」
今自分達の一族である矢沢氏にこちらへの寝返りを誘えばというのだ。
「城は落ちます」
「そうか、ではな」
「宜しいですな」
「あの城を攻め落とせば信濃の北は手に入る」
晴信は幸隆に確かな声で答えた。
「ならばな」
「ここで、ですな」
「仕掛けよ」
これが晴信の断だった。
「そしてじゃ」
「寝返らせるのですな」
「そうじゃ、城の中に火を点けるなりさせよ」
「中から乱し」
「その間にじゃ」
城が乱れこちらに何も出
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