第二章 二度目の初戦
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北を向けば、そこに広がるは住宅街、
反対側を向けば、手賀沼が雲間からの陽光を受けてきらきらと粒子を反射している。
千葉県我孫子市立天王台第三中学校の、屋上からの眺めである。
小さな校舎なので屋上も広くはないが、それでも現在二十人ほどの男女が、お喋りしたり、追いかけっこ、縄跳びやキャッチボールなどをしてそれぞれの時間を堪能している。
手賀沼側の隅っこでは、五人の女子生徒が集まって話をしている。
令堂和咲。
昭刃和美。
明木治奈。
大鳥正香。
平家成葉。
五人が話を、といっても現在喋っているのはカズミだけであるが。
それを、正面向き合っている令堂和咲がぽーっとした現実味のない表情で聞いており、さらに残る三人が見守っているという構図である。
「……と戦うために魔力を引き出す服がいわゆる魔道着で、変身アイテムがこいつ、クラフトってわけだな」
茶髪ポニーテールの少女、昭刃和美は自分の左腕を立てて、リストフォンをアサキへと見せた。
「目立つことなく堂々と身につけられるように、ってことでリストフォン型になっている。つうか最近のモデルは本当にリストフォンの機能も搭載してっから、わざわざ二台持ちする必要はなく実に家計に優しい。って、ここまでは昨日も簡単に話し……って聞いてんのかアサキてめえ!」
カズミは、隠さず大アクビをしているアサキの制服襟首を掴むとグイグイ乱暴に引っ張った。
「うわっ、ご、ごめんなさい。だって、だって昨日、一睡も出来なかったからああ!」
そう。昨夜は本当に全然眠れなかったのだ。未知の生物に襲われて生命を奪われかけたのだ。ズタボロになりながら、戦って倒したのだ。恐怖に、興奮に、すんなり眠れるはずないだろう。
強烈な眠気にふらふらしながらなんとか登校して、明るい日差しや生徒たちの賑わいにようやく安堵が訪れて、自席で鼻ちょうちん膨らませながら船を漕いでいたところ、国語担任の杉山良雄先生から転校二日目だというのに容赦皆無のゲンコツを食らって起こされ、バケツ両手に立たされて、結局、五分も寝られなかったどころか、疲労が蓄積しただけという始末。
「寝てねえのかよ。まあ、おしっこ漏らしたくらいだからなあ」
わははと笑うカズミ、の胸倉をアサキががっしと掴み返していた。
「それいうなあああああああ! 地の果てまでぶっ飛ばすぞおお!」
真っ赤になった顔をカズミへと近付け、怒
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