第一章
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テレビ世代
池田真礼と雄馬の姉弟はずっと欲しいものがあった、それでよく自分の両親に対してしきりにねだっていた。
「うちもテレビ買おうよ」
「そうしようよ」
「馬鹿言うな」
父親が二人に話した。
「テレビなんて高いものそうそう買えるか」
「今は無理よ」
母親も二人に言った、畳の居間でちゃぶ台を囲んでコロッケと味噌汁で白いご飯を食べながらそうしている。
「とてもね」
「けど」
雄馬は母に口を尖らせて言った、空襲を乗り越えてから十年以上何とかもっているといった感じの家の中で。
「月光仮面観たいから」
「そんなに観たいの?」
「観たいよ」
どうしてもと言うのだった。
「昨日友達の家で観たけれど凄く面白かったから」
「あんな面白いものないよ」
真礼も親達に言った。
「本当にね」
「面白くても買えないんだよ」
「あんなのそうそう買えないわよ」
今度は両親で言ってきた。
「だから我慢しなさい」
「そんなに観たかったら街角で観ろ」
「ちぇっ、お家で観られたらなあ」
「そう出来たらいいのに」
雄馬も真礼も眉を顰めさせるばかりだった、だが幾ら言っても両親はテレビを買わなかった。そしてだった。
二人は仕方なく街角やテレビを持っている友達の家に行って観ていた、しかしそうしたことを続けてもだった。
雄馬は丸坊主頭でおかっぱ頭の姉に家で手塚治虫の漫画を観ながら言った。
「姉ちゃん、テレビ観たいよな」
「お家でもね」
真礼は算数の宿題を解きつつ弟に応えた。
「そうしたいわよね」
「本当にな」
「けれどね」
それでもとだ、真礼は居間に寝そべって漫画を読んでいる弟にこうも言った。
「それはね」
「うちは貧乏だからだよな」
「我慢するしかないわよ」
「何時かテレビ欲しいよな、うちも」
「本当にね」
「家で月光仮面観たいよ」
雄馬はまだこう言っていた、そしてそんな話をしているとだ。
ある日両親が二人を居間に呼んでこう言った。
「おい、凄いもの買ったからな」
「今から観なさい」
「観るって何を?」
真礼は両親の言葉に怪訝な顔になって尋ねた。
「一体」
「これだ、これ」
「あんた達ずっと欲しいって言ったでしょ」
「えっ、それって」
まずは真礼が驚いた、両親が出してきた四角く大きなそれを観て。
「テレビじゃない」
「うちもテレビ買ったのか」
「中古だけれどな」
父親が真礼と雄馬に笑って答えた。
「買ってきたぞ」
「今から点けるからね」
母親も言う、見れば親達の顔もうきうきとしたものだ。
「ちょっと待ってなさい」
「これからうちでも月光仮面観られるからな」
「楽しみにしておいてね」
「嘘みたい」
「そうだよ
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