第四章
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「そのことは」
「後はそなたに任せる」
「はい、必ずこの国の変化をです」
「この国に根付かせてくれるな」
「そうさせて頂きます」
「私が死んで終わらせたくはない」
エジプトの変革、それをというのだ。
「その後の為にもな」
「後のファラオは私が務め」
「私の跡を継いでくれ」
「その様に」
「そなたには辛い役目を負わせている」
王妃であることを捨てさせ姿を消してだ、そのうえでファラオとしてまた世に出たからだ。これまでの身分を隠して。
「そのことは申し訳なく思う」
「構いません」
セメンクカラーはまたファラオに答えた。
「私が自ら申し出たことですから」
「だからか」
「ファラオはお気遣いなく」
全くという言葉だった。
「後のことも」
「そう言ってくれるか」
「全てはファラオとエジプトの為です」
セメンクカラーは微笑んで言うばかりだった、そのうえで。
男ものの服と鬘を身に着けた、そうして完全にセメンクカラーになってだった。
彼と共に表舞台に出た、そうして彼を助けて政治を行うのだった。
セメンクカラーという人物はエジプトにおいて謎の人物の一人とされている、急に出て来た謎のファラオでありアメンホテプ四世が共に国を治めるファラオとして世に出した。その正体は今も不明である。
だがこれまで彼と共に国を治めていた王妃ネフェルティティがこの頃に急に表舞台に出なくなっている、そして新しい王妃が出て来ている。これは実に不思議な話である。
セメンクカラーは実はネフェルティティではなかったのか、この説は言われている。だが真相は今はわかりにくい。あまりにも過去のことであるので。だが歴史は一つ彼等にとって残酷な事実を残している。
この改革は失敗に終わりネフェルティティは三十七歳で寂しく世を去った、アメンホテプ四世はその前に病で倒れている。彼等の後継者こそあのツタンカーメンだったがこのファラオが若くして世を去っているのは王の墓にある通りだ。
その後でエジプトの保守派の者達が復権しエジプトの伝統や信仰は戻った、このことを喜ぶ意見もあるがアメンホテプ四世とネフエルティティの改革が中断させられ結果としてそれで終わったことを悲しむ声もある。どちらが正しいかはわからない。だが歴史にはそう伝えられている。彼等が懸命に推し進めたことは全て否定された。その事実は。
セメンクカラー 完
2019・5・5
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