第三章
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「水道水よりもな」
「お茶ですね」
「それはな」
実際にと言うのだった。
「ペットボトルのものも飲んでるしな」
「あっちのお茶もいいですよね」
「うむ、しかしな」
「しかしといいますと」
「お茶好きなぞ何処でもおるぞ」
それこそとだ、鷲塚はお茶の精に言い返した。
「それこそな」
「それはそうですが」
「わし以上のお茶好きもおるだろう」
「それはそうですが」
それでもと言うのだった。
「私はです」
「それでもか」
「お爺さんの雰囲気が好きですから」
「わしのか」
「人生を達観しきった」
「達観というかもうな」
「何もですか」
「やることがない」
自分のこのことを言うのだった。
「後は死ぬだけだ」
「いや、そうじゃないですよ」
「この歳になって婆さんもおらんのにか」
「はい、お爺さんはまだです」
「やることがあるのか」
「それはわからないですが」
「やっぱりないではないか」
「いえ、私がお爺さんを気に入ったことは」
このことはというのだ。
「事実で」
「それでか」
「ここにいたいと思う様になって」
「それでか」
「ここにいる次第です」
「わからんな、しかしな」
それでもとだ、鷲塚は相手が人間でなく精霊というのなら特に何も思うこともないと思ってだった。
それでだ、お茶の精にこう返した。
「断る理由もないしな」
「このお家にいていいですか」
「勝手にしろ、しかしな」
「しかしといいますと」
「家事はせんでいい」
このことも言うのだった。
「別にな」
「私出来ますよ、家事は」
「何もせんとぼける」
だからと言う返事だった。
「毎日掃除と洗濯と料理をせんとな」
「そうしないとですか」
「ぼける、流石にぼけるのはな」
幾ら後は死ぬだけと思っていてもというのだ。
「嫌だしのう」
「やっぱりそれはですね」
「わしも嫌だからな」
またこう言うのだった。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「家事はわしがやる」
「そういえばお部屋奇麗ですね」
「毎日家の隅から隅まで掃除をしておる」
そうもしているというのだ。
「それがいい運動にもなるしな」
「お風呂場やおトイレも」
「庭や玄関もな」
そちらもというのだ。
「しっかりとしておる」
「そうですか」
「だからな」
「家事はしなくていいですか」
「一切な、おるならいいが」
「何かそう言われますと」
「もっと言えばもう女に興味もない」
これもというのだ。
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