第二章
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「この話によると、むしろ」
「ペリよりもか」
「ペリさえもこれ程美しくはあるまいと」
そこまでの美貌だったというのだ。
「月ちまがうばかりに」
「月か」
「そこまでです」
「ううむ、ペリ以上にか」
「そしてここで夢を見た者は思ったのです」
どう思ったかも言うのだった。
「何故誰もがイブリースを恐ろしい顔だと思うのかと」
「蛇だの狼だの獅子だの犬だのとな」
「左様ですね、王宮の絵師の方々も」
「この絵か」
イスラムはあまり絵は描かれない、ムハンマドが偶像崇拝を厳しく禁じているからだ。だが絵もあるにはあるのだ。
シャーはここで今自分達がいる王宮の大広間の絵を観た、そこにはイブリースも描かれているがその姿は。
「醜いな」
「左様ですな」
サアディーも答えた。
「禍々しく曲がった手、顔も獰猛で」
「醜い」
「荒み果てた姿です」
「だが真の姿はそうなのか」
「夢を見た者もそう思いましたが」
ここでサアディーはこう言った。
「しかしです」
「そこからか」
「はい、イブリースは言ったのです」
その言葉も紹介するのだった。
「筆は敵の手にあると」
「文章や絵を書き描くか」
「その筆はです」
「人間の手にあるか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「イブリースの姿はです」
「醜いか、だが」
「いえいえ、イブリースはさらに言いました」
夢の中でというのだ。
「これも人の夢の中のことなので」
「それでか」
「はい、夢を見ている者が思う姿でです」
「その美しい姿でか」
「出ています、ですからこれもです」
「筆で書かれて描かれているのと同じか」
「そうなのです、つまりは」
サアディーはさらに話した。
「イブリースの姿は常に変わるのです」
「その者が思う姿にか」
「そうなのです」
「成程な、そういうことか」
「はい、実は」
「ではここにいる者達は全て正しいのだな」
シャーは玉座からこの場にいる学者や詩人達を見回して述べた。
「そうなのだな」
「はい、その実は」
「成程な」
「私も詩が違えば」
その時はというのだ。
「イブリースの姿も変えています」
「そうなのか」
「馬にする場合もあれば狼にする場合もある」
「他の姿にもだな」
「します」
シャーに対して素直な声で答えた。
「私は」
「そうか、つまりな」
「はい、イブリースの姿は変わりません」
「まさに書き描く者の筆次第だな」
「その思うままなのです」
こう言うのだった、こうしてシャーの疑問は解けた。彼はこのことに満足しサアディーだけでなくこの場にいた学者や詩人達全員を宴に招いた。そして美酒と美食を馳走しそれを褒美とした。サアディーはここで詩を詠いシャーはここで
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