第四章
[8]前話
アリーはメディナに去りもう彼等は手出し出来なかった、それでアリーはメディナでムハンマドと再会してだった。
そのうえでだ、彼に話した。
「貸し借りはです」
「全て終えてくれたか」
「はい」
そうしたと言うのだった。
「無事に」
「それは何よりだ、ではだ」
「それではですね」
「わしも心残しがない」
「メッカに戻るにしても」
「貸し借り、特に金のことはな」
このことはというのだ。
「しっかりしておかないとな」
「一時でもですね」
「商売の基本だ」
ムハンマドは商人として言った。
「だからな」
「ではわしのしたことは」
「よくやってくれた、ではこのメディナのいざかいを終わらせて」
「そのうえで、ですね」
「軍勢を立ち上げ整えてな」
そうしてというのだ。
「そのうえでだ」
「メッカに戻り」
「あの街からな」
「イスラムを広めますね」
「見ているのだ、イスラムは世界を席巻する」
ムハンマドはアリーに絶対の声で言った。
「そして世界の宗教ともなる」
「左様ですね」
「そうだ、だからだ」
それでというのだ。
「今この時は祝うべき時なのだ」
「メッカを去ったことは」
「この時からはじまるのだからな」
「そうですね、では」
「アッラーにこの度のことを感謝しよう」
こう言ってだった、ムハンマドはメッカを去ったことをヒジュラとしてイスラムの暦もこの時からはじめたのだった。
ヒジュラの際のアリーの活躍は歴史に残っている、その勇気の前にメッカの者達は何も出来なかった。彼等はこのことを後になって後悔したという、あの時何があってもとだ。だが後悔先に立たずと言うか今イスラムは多くの信者を持ち世界宗教の一つとなっている。そのはじまりにはこの勇者がいたのだ。
アリーの殿軍 完
2019・5・14
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