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アリーの殿軍
第二章
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 次の日の朝彼等は刀を用意してムハンマドを待ち構えた、しかし。
 ムハンマドの家からアリーが出たのと見て彼等は言った。
「あれはアリーではないか」
「ムハンマドではないぞ」
「ではもうあいつはメッカを出たのか」
「そうしたのか」
「その通りだ」
 アリーはいぶかしむ彼等の方を見て堂々とした声で言った。
「ムハンマド様はもうメッカにおられぬ」
「くそっ、逃げられたか」
「遅かったか」
「では残ったのは貴様だけか」
「そうなのか」
「その通り、わしだけだ」
 アリーはこれまた堂々とした声で言った。
「他のムスリム達はもういない」
「そうか、ではだ」
「貴様を殺すか」
「そうしてやるか」
「やってみるか」
 アリーは身構えた敵達を睨み返して問うた。
「わしを殺してみせるか」
「うっ・・・・・」
 アリーは一人だ、だが。
 彼の気迫を見てだった、彼等は怖気付いた。それで言うのだった。
「そうしてやりたいが」
「貴様は一人だいな」
「見逃してやる」
「さっさと逃げろ」
「わしを殺さぬか」
 アリーは怯む彼等を見て問うた。
「今以外にそれはないと思うがな、わしは一人だ」
「我等とて誇りがあるわ」
「戦でもないのに一人をよってたかってはせん」
 実際にそう考えているがそれよりもアリーの気迫に対する恐怖の念の方が遥かに強くそれで言うのだった。
「だから行け」
「さっさとな」
「今だけは見逃してやる」
「そして逃げろ」
「メッカから出て行け」
「ならそうしよう、どのみちわしも逃げるつもりだ」
 アリーはその彼等にこう返した。
「だがやることがある」
「何だ、逃げないのか」
「まだメッカにいるのか」
「そのつもりか」
「そうだ、ムハンマド様の貸し借りを収めよう」
 元々ムハンマドは商人だ、メッカにおいて商いをしていて裕福な暮らしをしていた。それで信仰を知ってからも商いをしていたのだ。それでメッカの多くの商人達から貸し借りがあるのだ。
 それでだ、アリーもなのだ。
「それから去ろう」
「それからか」
「そのうえでメッカを去るか」
「そうするのか」
「そうだ、全てを終わらせてな」
 そうしてと言って実際にだった。
 アリーは一人メッカの街を歩きムハンマドと貸し借りがある商人の店を尋ねて回ってそうしてだった。
 ムハンマドとの貸し借りを清算した、その間ムハンマドの敵達はずっとアリーを見ていたが近寄りはしなかった。
 その彼等と悠然と自分達と貸し借りの話をするアリーにだ、商人達は自分達の方が驚いてアリーに言った。
「おい、あんた大丈夫か?」
「今こんなことしていいのか?」
「もうムハンマドさんは逃げただろ」
「あんたも早く逃げろ」
「わし等の話はいいからな」

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