第二章
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「だからだよ」
「岸さんは鳩山さんとは違いますか」
「お金に汚くはない」
「そうなのですね」
「お金のことはわかっているつもりだよ」
一体どういったものか、それをというのだ。
「私はね、むしろだよ」
「むしろ?」
「むしろといいますと」
「最近吉田さんが目をかけている若い人がいるね」
ここでどういうものかという顔になってだ、岸は周りに話した。
「新潟の人で」
「田中さんですね」
「田中角栄さんですね」
「彼は見所がある、絶対に凄い政治家になる」
岸は目を光らせてこうも言った。
「間違いなくね、しかしね」
「かなりの資金力がありますね」
「そちらも凄いですね」
「その意味でも有望な人ですね」
「うん、しかし危険だよ」
田中についてだ、岸はこう言うのだった。
「彼はね」
「お金ですが」
「それのことで、ですか」
「あの人は危ないですか」
「そうだよ、彼は確かに凄い政治家になる」
このことはまた言う岸だった。
「絶対にね、しかしね」
「お金のことで、ですか」
「危うい」
「そうした方なのですね」
「やはり政治はお金にしても」
それがなくては話にならないがというのだ。
「それでも彼はどうか」
「濾過した方がいい」
「そうなのですね」
「そこを吉田さんが言うかどうか」
田中の師になる吉田茂がというのだ。
「果たして」
「それは、ですね」
「わかりませんか」
「吉田さんもお金のことまで言うか」
「そのことは」
「ここで私が言うと」
岸自身がというのだ。
「系統が違うからね」
「同じ党でもですね」
「我々は吉田さんとは違う系統ですからね」
「系統が違うとあまり言えないですね」
「どうにも」
「そうだよ、田中君は将来は首相になるかも知れないが」
そこまでの人物だがというのだ。
「それでもあの金はどうかと思う」
「それで何もなければいいですが」
「果たしてどうなるか」
「彼にとって爆弾になりかねないですか」
「そう思うよ」
岸は周りにどうかという顔で述べた、そのうえで政治活動を続けていった。
岸は首相になり安保法案を通した後で辞任したが以後も政界の有力者であり続けた、田中はその中で岸が言った通りに頭角を現していった。
そうして首相にもなった、だが。
ここでだ、岸はまた周りに話した。
「首相になった時こそだ」
「用心すべきですか」
「身の回りのことは」
「そう、私が言うからにはわかると思う」
その首相になった自分がというのだ。
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