第一章
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濾過
岸信介について鳩山一郎はこう言った。
「あんなお金に汚い人はよくないよ」
「そう言われますか」
「うん、ああしてお金をよく使う人はね」
岸の政治資金のことを言うのだった。
「よくない、いつも色々言われるね」
「その政治資金のことを」
「確かに政治にはお金が必要だよ」
このことは事実だというのだ。
「本当にね」
「それは事実ですね」
「山縣公だってそうだった」
山縣有朋だ、明治から大正にかけて権勢をふるった明治の元勲の一人だ。
「そして他の元老の人達にしても」
「色々言われていますね」
「どういう訳か長州に多いね」
暗に岸が山口出身で選挙区もそこにあることを指摘する。
「あちらの元老はね」
「そうした話が多いですね」
「うん、しかし本当にね」
「お金にはですか」
「汚いとね」
どうにもというのだ。
「やはりよくないよ」
「だからですか」
「正直岸さんはどうかと思うよ」
自分から見て金に汚いからとだ、鳩山はまた述べた。
「本当にね」
「では、ですね」
「私はあの人の様なことはしないよ」
絶対にという言葉だった。
「何があってもね」
「左様ですか」
「奇麗じゃないとね」
こう岸について言うのだった、鳩山のこの言葉は当然として岸の耳に入ったが当の岸は平然としていた。
そうしてだ、周りにこう言っていた。
「あのね、私は違うんだよ」
「お金に汚くはない」
「そう言われますか」
「政治はやっぱり金だよ」
これが現実だというのだ。
「何といってもね、そしてね」
「そして?」
「そしてといいますと」
「お金は使わないといけないが」
それでもと言うのだった。
「奇麗なお金じゃないといけない」
「そのお金はですか」
「奇麗でないとですか」
「さもないとそこを衝かれる」
シビアな顔でだ、岸は周りに忠告する様に話した。
「そしてだよ」
「政治的にですね」
「そこを衝かれてですね」
「追い詰められますね」
「そうだよ、最初は汚いかも知れないが」
それでもというのだ。
「濾過しないといけないんだよ」
「濾過、ですか」
「水を奇麗にする様に」
「そうしないといけないですか」
「お金もまた」
「そうだよ」
こう周りに話すのだった。
「それが大事だよ」
「お金は濾過すること」
「そうして奇麗にすることが大事ですか」
「政治については」
「それが大事ですか」
「政治だけじゃなくて何でもね」
金というものはというのだ。
「濾過というとお水と同じだね、本当に」
「必要なものであり」
「奇麗なものでないといけない」
「本当にですね」
「さもないと幾ら多くてもまずい」
そう
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