プロローグ、或いはまだ見えぬ夜明け
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ても悪くはないのだが、それはそれで不都合が起きる可能性が高い。惜しいが、今日は殺すだけだ。鑑賞はまたの機会。
「お前は本当に悪趣味ね」
揶揄うように、しかし思考を溶かすような声で、女が哂う。哂われて、嫌な気はしないのが不思議。
「そんな悪趣味なオレに、わざわざ付き合ってくれるキミも大概だと思うけどなぁ」
「……それもそうね」
血塗れた刃――フォールディングナイフを右手の指先で回して、銀霧の中で、歌う。タイトルを忘れたオペラを口ずさむ。
霧に阻まれて、夜空が見えないのが残念だった。こんなに良い気分をしているのだから、きっと綺麗に見えたであろうに。徐に、夜空があるであろう角度に刃をかざして、それでも当たり前だが霧しか映らない。……ま、いっか。
今もまだ在るこの霧が晴れるまでは、酔っていよう。くるくると変てこな踊りを始めれば、自然と笑みがこぼれ、笑みに釣られて女も笑ったような気配を感じ取った。
夜は更けていく。首許を斬られた死体を残して。
夜が明けたとき。銀色の霧は残さず消えていた。
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