三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第33話 人型モンスター(2)
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「また妙なことを。お前は大魔王様復活を妨げようとする存在。それで決まりなんだろう?」
「そうですけど。人型モンスターは人間を食べませんよね?」
「当たり前だ」
「そして住んでいるところも別。現在の人型モンスターの人口はごく少ないと聞いていますので、縄張り争いに相当するような戦いも起こりえないはずです。ならば、両種間では『戦いが起こらないこと』が自然の理にかなっています」
「意味不明な理論も一周回ると面白くなってくるな。それで?」
「はい。戦いなしに解決することが本来の姿だと思いますので、そちらのダヴィドレイという人物と話がしたいです。話をして、新しいアンデッド化技術の開発および大魔王復活の中止をお願いしたいです」
「……」
「でも、今は時間があまりないんです。あなたは知らないと思いますが、この先の岬で危ない実験が――」
「知っているに決まっているだろう」
シドウの言葉は、途中で冷笑とともに遮られた。
「え?」
「あれは危ない実験などではない」
強めに吹き続けていた風が、さらに強くなった。
青年の銀髪、シドウの亜麻色の髪、ティアの黒髪。それぞれが、生温かく湿った風でなびく。
「魔力を持ち、魔法を駆使するアンデッドを生成する――。ほぼ確実に術は成功するとみられている。被験体は事故死した人間の魔法使い。きわめて安全な実験だ」
「……! まさか――」
青年が、ふたたび背中の大剣に手をかけた。
そして。
片手で軽々と抜いた。
シドウもティアも、目を見開いた。
「そのまさかだ」
まるで細身剣のような扱われかたとは裏腹に、厳かな装飾が入った大剣の剣先は、鈍く、そして強く地面に衝突し、その質量を主張した。
「大臣はすでに金品で買収済み。最初からこちらの注文どおりに進んでいた実験だ。それをやめさせたいなら、実力でとめるしかない」
「……」
大剣が目立ちすぎていてシドウたちは気づかなかったが、エリファスは背中に盾も背負っていた。
左手でそれを持ち、銀髪の青年は構える。
「俺は大魔王様の盾となるはずだった戦士。この剣も、大魔王様が生前に俺のために用意してくださっていたものだ。エメスという名が付いている」
凄まじい速度で流れ続ける暗雲の下、その大剣が不気味に光る。
「さあ、俺と戦え。ドラゴンの子よ」
シドウはさらに下がるようティアに合図すると、ドラゴンに変身した。
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