救いの夢から償いの未来へ
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必ず」
かつて同じ町から巣立った二人は、近しい者の死と裏切りを背負って、生きていく。背負うよりも記憶の中に葬り去ってしまった方が楽なのかもしれない。関係ないと、絶ち切ってしまえば自由になれるかもしれない。
だけど、それは死者だけではなく今生きている人との繋がりも捨てることだ。塞ぎ込んで廃人同然の生活をしていた時のように、生きている時間を食いつぶすだけ。
背負うことは辛くても、今いる大事な人と、これから会う誰かと巡り合っていく方がずっと生きている意味がある。そう――
「涼姉!入っても大丈夫!?」
「……巡、声が大きい。病院は静かに」
「いいわ。四葉も起きてるけどそれでもいいなら」
そう言うと、巡がゆっくりとドアを開けて、続いて明季葉が四葉に一礼して入ってくる。明季葉の手には、奏海とは別のフルートが握られている。
「……大体の顛末は涼香から聞かせてもらったよ。君達を騙していたこと……済まなかったね」
「いいん……です。四葉さんが何もしてなかったら……そもそも『俺』は生まれてなかったんだから」
本当の海奏の兄は千屠が殺害していて、今ここにいる巡はそれを模したメタモンによる模造体だった。自分が人間ではないことを巡はどれだけ受け入れられているのか。今は落ち着いているようだが、これから先そのことに悩まさせることも必ずあるだろう。
「とても怖かったし、そんなことを考えていて明季葉たちに何も言わなかったことは思うところがあるけど……巡がいるのは、四葉さんのおかげだから」
「教えてください、お願いします!俺……人間じゃないかもしれないけど、人間として生きていたい!旅を続けて、そのあとは家を継いで……俺の生まれた意味を全うしたいんだ!」
「お願い、します」
巡と明季葉は二人で四葉に頭を下げる。
「……わかった。僕から説明はするけど、一番詳しく知っているのは奏海だからね。……彼は?」
「しばらく一人にしてくれって……旅も、もう続けたくはないって言ってた。俺と、どんな顔をして話せばいいかわからないって……」
奏海も、巡達をある意味では騙していた。自分の目標の為に欺いていたことへの罪悪感があるのだろう。彼のこともゆっくり導いてあげる必要がありそうだ、と四葉は思う。
「二人は、旅は続けるってことでいいのね?」
「続けるよ!涼姉も、来てくれるよね?」
「勿論、引率のトレーナーとしてついていくわよ。……明季葉は、それでいいの?」
「うん。明季葉も……そうしたい」
涼香は明季葉の旅の目的を聞いている。巡が実は家の長男でなく、人間でさえないのなら彼女が旅をする理由はなくなったことになるが……奏海のフルートを握り締め、巡を見る彼女の顔を見ればそれとは別に、旅をする理由が出来たと
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